元公安警察官は見た 駐日大使の愛犬が散歩中、日本人男性にケガを負わせ……危うく訴えられそうになった件

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ヴィクティム・リポート

「リードを外したことに加えて、怪我をさせたのに救護措置をとらず逃げてしまったのは悪質と見なされます。大使は怪我をさせたとは思わなかったと言うかもしれませんが、そんな言い訳は通用しません」

 被害者の男性は、場合によっては被害届を出すと言い出していた。

「そうなれば大使は被疑者となり、警察は出頭要請をかけ、大使が応じないと外務省が乗り出して国家間の問題へと発展することになります」

 勝丸氏は、大使館に連絡して大使に面会を求めた。

「すぐに会うというので、大使館に出向きました。大使と話してみると、彼はそんな深刻な事態に発展しているとは思っていない様子でした。そこで『相手は怪我をしており、警察にヴィクティム・リポート(被害届)を出すと言っています。そうなると刑事事件となり、外務省儀典官室が出てくる問題になります』と言いました」

 儀典官室の名前を聞くと、大使は青くなった。儀典官室は駐日大使館のお目付け役的存在で、日本に滞在する外交官は、ここに通報されるのを嫌うそうだ。

「大使は『私はどうすればいいのだ』と言うので、『相手は謝罪と治療費を求めているようです。これにきちんと対応されるべきでしょう』と言うと、大使は『わかった、誠意をもって対応する』と」

 管轄署が間に入り、その後謝罪と慰謝料の支払いによって示談が成立した。

「管轄署から、『被害届の提出には至らず』との報告が来ました。大使は私にかなり感謝して、『私にできることがあればいつでも連絡ください』と言ってくれました。彼との信頼関係を築いたことは、大きなメリットになります。今後貴重な情報を入手できる可能性があるからです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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