「笑い声は時として凶器になる」 ふかわりょうが五輪を巡る炎上騒動で感じた「周囲の笑い声の残酷さ」

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自分もいつかメダルを噛んでしまうかもしれない

 尊敬語、謙譲語、丁寧語。関係性を重んじる国民性。その副反応として、仲間はずれを作ったり、人と違うことを笑ったり、差別的な笑いを生む土壌となっています。集団生活における、歪んだ自己防衛によって生まれる差別。何を面白いと思うかは自由ですが、笑い声は言葉と同様、人を傷つける刃物になりうる。

 愛想笑い、苦笑い、思い出し笑い。状況に応じて、笑い方を使い分ける日本人。中でも、愛想笑いは日本人の特技かもしれません。全く意味をなさないものもあれば、私は、あなたから嫌われたくない、好印象を持たれたい、という意思表明もあり。逆に、嫌いな人には一切愛想笑いをしなかったり。日本では愛想笑いが一つの意思表示の役割があり、社会の潤滑油になっています。しかし、海外に行くと当たり前には見かけません。普段、愛想笑いに囲まれているから、なくなったことで冷たい印象を受けることもあります。

 断る意思を伝える際に、日本人は笑顔を添えてしまいます。その件に関しては断るけど、私を悪く思わないでね、と。これも国民性。笑顔なしに、「結構です」と言ったら、怒らせてしまうかもしれない。しかし、この表情は外国人には不可解に映り、なんで笑っているのかと不気味がられます。周囲の顔色をうかがい、協調性を重んじる風潮が生んだ愛想笑いも、加減や場所を間違えるといい結果に繋がりません。一方で、「まじウケる」と言いながら、顔が全く笑っていない人も日本では多く見受けられます。

 笑いが好きで、この世界に入りました。気がつけば、年下ばかりのスタッフに囲まれ、こんな私でも気を遣われる存在になりました。年を重ねるほど、立場が上になり、誰からも否定されない日々。私もいつか、メダルを噛んでしまうのではないか。そうならないためにも、笑い声の成分をしっかり見極めたいと思います。

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