山里亮太が口説き落とした「もう一人の女」
女優・蒼井優との結婚会見での南海キャンディーズの山里亮太の当意即妙な回答ぶりが、各所で評判となっている。ちょっと意地の悪い質問に対しても、感情的になることなく、ユーモアをまじえながら誠実に回答する姿を見るうちに、当初話題になっていた両者のルックスの格差が目に入らなくなったという人も多いのではないだろうか。
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実のところ、彼が意中の人を口説いて成功したのは、分かっている限り、これで2度目だ。今回のキューピッド役でもあり、会見にも同席した相方のしずちゃんこと山崎静代もまた、彼が口説いてパートナーになってもらった相手。『ザ・殺し文句』(川上徹也・著)には、次のようにある。
「結成前、2人は別々のコンビで漫才をしていました。前のコンビ足軽エンペラーを解散してピン芸人をしていた山里は、新たなコンビ相手を探していました。
そこで山里が目をつけたのが山崎でした。性別を超越したおもしろいキャラである山崎とコンビを組めば売れるかもと思った山里は、山崎をケーキバイキングに誘いました。それまでほとんど喋ったことがなかった2人でしたが、山里は山崎に単刀直入に、しかし下手に出て提案しました。
『勝手ながら、君と僕のコンビのネタを書いてきてる。このネタに可能性を感じたら、今のコンビを解散して、僕と組んでくれませんか?』
結果として、この言葉が『殺し文句』となり、2003年、2人はコンビを組むことになります」
川上氏は、この「殺し文句」のポイントは「下手に出る」というところなのだと語る。
「相手に何か頼むときに下手に出るなんて当たり前じゃないか、と思われるかもしれませんが、上手にそれをやるのは案外難しいものです。山里さんの場合、頭の回転は速い人ですし、ネタを書く能力が高いことも周囲には認知されていたでしょうから、もっと『俺についてこないか』式の誘い方もできたはずです。
『俺のネタと君のキャラクターがあれば、天下を取れる』
という感じですね。でも、そうではなくて『勝手ながら』と前置きをして、『可能性を感じたら』『僕と組んでくれませんか』と丁寧にお願いをしている。これが良かったのではないかと思います」
田中角栄の「プライドをくすぐる殺し文句」とは
似たような殺し文句として、田中角栄のエピソードがある、という。
「1961年、田中角栄が自民党政調会長になった時の話です。当時、医療費の値上げをめぐって、自民党は日本医師会との間で対立していました。自民党側、田中が出した案に対して、日本医師会会長の武見太郎が『話にならない。出直してもらいたい』と一蹴するといった一幕もあったほどです。
事態を打開するために、武見のいる会長室に田中は乗り込みます。そして、こんな風に言いました。
『武見さん、わたしら素人で、医療のことはよくわかりません。ですからわたしは、こうして白紙を持ってきた。どうか思うとおりの要求をここに書き込んでくださいよ。ただし、政治家にもわかるように書いてくださいね』
もちろん実際には、政調会長としていろいろ勉強をして、理論武装もすませていたはずです。しかし田中はあえて『わたしら素人』と言って下手に出て、謙虚なスタンスを前面に出しました。
結果として、武見も田中が困ることにならないような配慮をせざるをえなくなりました。こうして事態は田中の思う方向に進んで行ったのです。
相手から下手に出られると、人はプライドをくすぐられ、自己重要感を増します。結果として、相手の言うことを聞きやすくなるのです。
今回の山里さんの結婚会見でも、彼は一貫して取材陣に対して下手に出ながら丁寧に答えようとしていました。その結果、レポーターたちもかなり毒気を抜かれたようにも思えます」(川上氏)
実るほど頭を垂れる稲穂かな、を実践するのは難しい。しかしそう心がけておいて損はなさそうである。