元公安警察官は見た 駐日大使館のレセプションに勝手にやって来る人々のヒドい行状

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。この9月『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、各国の大使館が行うレセプションパーティーの会場に勝手に現れる迷惑な客について聞いた。

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 各国の駐日大使館は年に1度、友好親善や情報発信を目的にナショナル・デーのレセプションを開いている。

「ナショナル・デーとは、本来独立、建国、革命などの国家の記念日のこと。日本に大使館を置いているすべての国が、自国のナショナル・デーを外務省に届け出ています」

 と語るのは、勝丸氏。かつて外事1課の公館連絡担当班に所属していた同氏は、大使館や総領事館との連絡・調整を主な任務とし、日常的に外交官と接触していた。

「毎年、ナショナル・デーの当日またはその日の前後にレセプションを開くのが一般的です。この他、ギリシアは大使が離任する際に開催するなど、ナショナル・デー以外のレセプションも頻繁に開かれています」

お国自慢の料理

 勝丸氏は公館連絡担当班にいた頃、年に100回以上、大使館のレセプションに出席していたという。

「大使館のレセプションには、普段なかなか接触できない国の大使や外交官と顔つなぎができるし、CIAやFBIの駐在員らと会って情報交換するのも参加する目的のひとつです。大きなレセプションの会場には、アメリカをはじめ色んな国の諜報機関の関係者が姿を見せます。ある意味、スパイの社交場のようになることさえあります」

 レセプションの会場には、帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニが使われることが多いという。

「レセプションでは、民族衣装や芸能、音楽、ダンスなどが披露されますが、なによりも忘れてはならないのがお国自慢の料理です。たとえばポーランドの場合、都内にあるポーランド料理店がホテルの厨房にレシピを提供。ホテルの調理スタッフと本国の料理人のコラボによるお国料理を提供していました」

 こんな異国の料理を味わえる機会は滅多にないため、お金を払ってでも参加したい人は結構いたという。

「そのため、ときには“パーティー・クラッシャー”と呼ばれる迷惑な人たちが出没することがあるのです」

 パーティー・クラッシャーとは、日本では聞きなれない言葉だが、招待されてもいないのにパーティー会場に押しかけて飲み食いし、迷惑行為に及ぶ人物のことである。

 欧米のパーティー・クラッシャーは破壊行為を行うケースもある。10年程前、イギリスの14歳の女の子がFacebookで誕生パーティーを呼びかけたところ、200人の若者が押しかけて暴徒化。家が破壊された事件が発生した。こうした事件が社会問題になり、欧米ではSNS上でパーティー会場の場所を告知することが疑問視されている。

 もちろん駐日大使館のレセプションで大暴れするようなパーティー・クラッシャーはいないが、勝丸氏は会場警備の相談を受ける立場だったので、彼らをどうやって締め出すかで頭を悩ませていた。

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