「ドクターX」製作費は1話1億円?視聴者は知らない本当の製作費とギャラ事情、テレビ局の本音

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ドラマはみんなトントンか赤字

 そもそも制作費1億円の原資がない。スポンサー料は高視聴率だと跳ね上がるような仕組みではないのだ。第一、スポンサーはドラマごとに入れ替わるのではなく、大半は半年おきに替わるから、「緊急取調室」とほとんど同じなのである。「ドクターX」だけスポンサー料が割り増しになるようなことはない。そんなことはスポンサーが許さない。

 日本テレビの幹部は常々、「ドラマはみんなトントンか赤字。制作費と視聴率の兼ね合いだけを考えたら、やらないほうがいいくらい」と語っている。3000万円台の制作費の中にはスタッフの人件費やスタジオ利用料なども含まれており、ドラマは利益が出にくいのだ。

 それでもドラマを放送する第一の理由は局のイメージを左右するから。たしかに儲からないからといってドラマから撤退したら、局としてのイメージが失墜する。半面、本当に制作費が1億円かかるとしたら、やめるか削減するだろう。事実、カネがかかる時代劇は消えてしまった。

 1本50分ほどで、制作費が本当に約1億円出るドラマもある。ただしテレビドラマではない。Netflixの配信ドラマだ。山田孝之(38)主演の「全裸監督」(2019年、2021年)、満島ひかり(35)と佐藤健(32)が主演し、2022年に配信される「First Love 初恋」、そして米倉の主演で来年1月に配信される「新聞記者/The Journalist」などである。潤沢な制作費が魅力となり、次々と役者が参入している。この流れは止まらないだろう。

「新聞記者/The Journalist」の共演陣は綾野剛(39)、横浜流星(25)、吉岡秀隆(51)、萩原聖人(50)、ユースケ・サンタマリア(50)、田中哲司(55)、柄本時生(32)、佐野史郎(66)、橋本じゅん(57)、でんでん(71)、寺島しのぶ(48)ら。強力布陣である。1億円の制作費も納得だ。

 なぜ、Netflixにはカネがあるかというと、会員からカネを薄く広く集めている上、世界約130カ国で公開できるからである。

 テレビドラマの場合、国内での放送や配信に頼っている限り、制作費には限界がある。おそらく1億円の制作費を得る日は永遠に来ない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月14日掲載

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