なぜ妻は突然、その日暮らしの「バツ3男」と逃げたのか……エリート商社マンが今だから語れる“反省と感謝”

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探偵が撮った写真

 探偵の調べによると、その男性は不定期の日雇い労働者で趣味はパチンコという、大作さんとは対照的なプロフィールの持ち主だった。なぜ妻は、よりによってそんな男に入れ上げたのか。

「探偵からの報告によると、その男は派手なアクセサリーを身につけ、粗野で乱暴な感じでした。でも、とにかく妻のことをとても尊重している様子だったと言うのです。妻が出かけるとき、アパートの前まで出てきて手を振ってくれるんだとか」

 探偵が撮ってきた写真に収まる妻の満たされた表情が、大作さんの胸をえぐった。

 そして、妻子を尊重してきたつもりだったが、実はそうではなかったことに気づいたというのだ。思い返してみると、旅行先やレストランでのメニュー選びのように小さなことから、家族のあり方にかかわる大きなことまで、大作さんが決定権を握っていた。

「妻の意見も聞いた上で決めていたつもりでした。でも、妻にしてみたら『結局、自分がしたいようにするんじゃん』って思っていたような気がします。年齢も私のほうが5つも上だし、情報収集力や判断力も私のほうが優っていたので、家庭内の力関係では明らかに私が強かった。パワーコントロールをきかせていたという自覚が、いまはあります」

上司から誘われたゴルフ

 営業という仕事柄か、大作さんは人当たりがよいが押しも強い。そして、頭のよさを感じさせる話し方をする。快活な声で理路整然と「こういう理由で、これがいいよね」「だから、こうすべきだよね」などと言われたら、異を唱えるのはむずかしかったのかもしれない。妻からすれば、精神的DVを受けていると感じたのであろう。

 とはいえ、不倫した挙句、子どもを連れて勝手に家を出て、他の男性と暮らしているのだ。怒りを引きずっていてもおかしくなさそうなのだが、大作さんは「いまは妻に感謝している」と言うのである。きっかけは「上司からのゴルフの誘い」であった。

「妻が家出をした直後だったので、『家庭の事情で』と断ったのです。上司の誘いを断るなんて、会社に入って初めてのことでした。そうしたら二度と誘われなくなってしまい……。出世コースから明らかに外されてしまったと焦る一方で、こんなことで評価が下げられてしまうような会社に自分は人生を賭けていたのかと情けない気持ちになってしまったのです」

 これまで培ってきた自分の価値観を少しずつ疑い始めた。

「いい学校を出て、いい会社に入って出世して、ということに何の魅力も感じなくなりました。それより、人としてどう生きるかが大事じゃないかと。もっと自由に、もっと自分らしく生きていこうと、会社勤めの傍ら副業を始めました」

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