なぜ君「小川淳也」は野党の“希望の星”になれるか 不安要素は「消費税」と「共産党」

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共産党との共闘に積極的

 そして小川氏の政治姿勢で目に留まるのは共産党との共闘に積極的なことです。小川氏は常々「自民党と本気で対抗するために野党候補の一本化は必要だ」と語っています。

 2016年の参院選、小川氏は民進党香川県連の代表として香川選挙区の野党候補を共産党候補者に一本化する先頭に立ちました。共産党候補への一本化は香川県だけで当時話題となりました。この時小川氏は共産党香川県委員会に歩み寄りを求め、「日本社会に必要なのは社会主義的変革ではなく資本主義の枠内での民主的改革」「日米安保条約の破棄や自衛隊の解消と言う政策は持ち込まない」「天皇制を含めた現行憲法の全条項を守る」などの確認書を交わしました。

 私はこの小川氏の前のめりな姿勢を懸念して、議員会館を訪ねました。そして「共産党と組むと民進党がどんどん浸食され、左傾化するんじゃないか」と率直に尋ねました。それに対して小川氏は「僕は変わって行くのは共産党の方だと思う。欧州のような共産党の現実化・中道化は時代の流れでしょう。欧州も入り口は選挙協力でした。今回はその第一歩ですよ」と話していました。

 欧州ではユーロコミュニズムと言われる共産党がソ連共産党と距離を置く動きが広まり、イタリアでは1990年代に共産党が解党して左翼民主党になり、「オリーブの木」という連立政権に参加しました。しかしあの参院選から5年。日本共産党は選挙協力にはさらに積極的に応じるようになりましたが、党名の変更はもちろん、綱領の抜本的な改定には踏み切っていません。

 代表選挙では共産党との共闘路線の是非が最大の焦点になります。比例代表で大きく議席を減らした今回の選挙結果を受けても、小川氏は共闘しながら共産党に中道化を求める立場を貫くのか、厳しく問われることになるでしょう。

期待を集めるか見放されるか

 映画でも描かれた小川氏のまじめさや正義感は、立憲民主党が失った信頼や期待感を取り戻す可能性を感じさせます。一方で、ある立憲民主党のベテラン議員は私にこう語りました。

「小川さんがこの難しい局面で代表になったら間違いなくつぶれる。粗削りだし軽すぎる。そこが魅力でもあるんだけど」

 まだ小川氏が推薦人20人を集めて代表選に出馬できるかは分かりません。ただもし立候補に漕ぎつけた場合、小川氏がイメージだけでなく具体的にどのような政策や方向性を掲げるのか。それによって出てくる異論や批判にどう応えるのか。そして立憲民主党の議員、国民は小川氏の主張について行くのか、行かないのか。

 野党の信頼回復・再生への道のりは果てしなく遠く険しいものです。しかし誰かがやらねば、日本の民主主義に希望はないのです。

青山和弘(あおやま・かずひろ)政治ジャーナリスト
1968年、千葉県生まれ。東京大学文学部卒。92年、日本テレビ放送網に入社し、94年から政治部。野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップ・解説委員を務める。与野党を問わず幅広い人脈を持つ。本年9月からフリーの政治ジャーナリスト。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月8日掲載

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