鉄道イベントに大異変 無料だったのに次々有料化…10万円でも即日完売のファン心理

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“迷惑ファン”の存在

 以前、イベント列車を取材した際、筆者に対して「臨時の列車を運行すると地元の自治体や住民から喜ばれるし、マスコミも大きく取り上げてくれるので話題になる。それは地域の活力にもなるからローカル私鉄にとってイベント列車を運行するメリットは大きい。しかし、デメリットもある。そのデメリットを上回るメリットを鉄道事業者だけではなく、地域全体で感じられるかどうかだと思う」と複雑な胸中を明かしてくれたローカル私鉄の役員もいた。

 これは、SLやトロッコ列車などの臨時列車の運行が、地元自治体や沿線住民の心の支えになっていることを表している。その一方で、鉄道ファンが大挙して押しかけることによる副作用を警戒する声でもある。

 鉄道ファンが大挙して押しかけることで、普段は地元住民しか使用しない駅が大混雑する。押しかけた鉄道ファンたちが列車に乗り、グッズを購入し、地元の商店で買い物をし、飲食店で食事をする――そんな地元経済に貢献するような話なら沿線住民も理解を示してくれるだろう。

 しかし、イベント列車による地元経済への恩恵は少ない。むしろ、鉄道ファンが押しかけたことで駅や線路などにゴミが散乱する、農地を踏み荒らされる、花や木を勝手に伐採されるといった負の部分が大きい。

 こうしたことが理由になり、イベント開催や臨時列車の運行に積極的になれない鉄道事業者や沿線自治体は少なくない。

 近年、SNSによって悪質な鉄道ファンの行状は可視化され、テレビ・雑誌などでも批判的に取り上げられるようになった。すべての鉄道ファンのマナーが悪いわけではなく、一部の鉄道ファンによる行動が取り上げられているだけだが、マナーのいい鉄道ファンと悪いファンを即時に判断することは難しい。そのため、鉄道ファンを十把一絡げにマナーが悪いと断罪する社会的な空気も生まれつつある。

 そうした社会的な非難が高まるにつけ、純粋に鉄道を楽しんでいるマナーのいいファンからは「マナーの悪いファンと一緒にされたくない」という声も出始めるようになった。意外に思われるかもしれないが、マナーのいい鉄道ファンはイベント有料化を好意的に捉える向きが強い。

 有料イベントは事前申し込み制だから、参加するには素性を明らかにしなければならない。素性が明らかになっていると、自制心が働き傍若無人なふるまいは鳴りを潜める。

 また、親子参加を必須条件にしている鉄道イベントも増えている。これも、親子で参加することにより、鉄道ファンが暴走することを未然に防ぐことを期待したものだ。

 10万円という高額なイベントを企画したJR東日本高崎支社の広報担当者は「高額なイベントを実施することで、悪質なファンを排除しようという意図はない」と否定する。しかし、図らずも高額な参加費が、暴走を抑制する一定の効果を発揮している。

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