大学時代に人妻を略奪、次は会社の後輩と… 40歳の“バツ2”男が語る「波乱万丈」と「これから」

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「麻里でなければできるんだ」

 相性がよかったのだろう。一度きりのはずが二度になり、三度になり、月に1,2回は会うような関係になってしまった。まずいと思いながらも、会うと居心地のいい関係から抜け出すことはできなかった。そのころ、麻里さんはかなり鬱々としており、家庭内の雰囲気が暗かったせいもある。

「麻里が鬱々としているのは僕のせいなんです。それはわかっているけど、性的な話がタブーになっているのが怖かった。ドラマなどを一緒に観ていて、キスシーンからベッドシーンへの流れがあると麻里はブチッとテレビを切るんです。恐ろしく暗い表情で。抱きしめてキスすると、『この先がないのに、キスなんてしないで』と言われるようになっていた。僕は浮気なんてするつもりはなかったけど、麻里でなければできるんだとわかってしまうと、やはり性欲は止められない。亜由美と一緒にいると楽しかったし……」

 そんな関係は1年足らずで麻里さんにバレた。麻里さんの傷がどれほど深かったか、彼には想像もつかなかっただろう。

「麻里は暴れました。家の中のありとあらゆるものを投げて、テーブルをひっくり返して、テレビも窓ガラスも破壊して……。近所から警察に通報されました。一応、夫婦げんかということで納得してもらいましたが、その後は麻里が泣き続けて。僕にはどうすることもできなかった。無力感に苛まれました」

「殺してやりたい」

 麻里さんは「殺してやりたい」と言った。「殺していいよ」と栄太さんも言った。彼は本気だった。自分を殺して麻里さんの気がすむなら、それでもいいと思った。

「麻里が包丁を手にしたんです。こういう人生を招いたのは自分だから、殺されてもいいと本気で思いました。だけど麻里は結局、できなかった。『私はあなたを愛した自分を裏切れない』と名言を吐いて出て行きました」

 それから約6年、彼は今も独身だ。麻里さんがどこでどうしているのか、彼は知らない。離婚したばかりのころ心配で連絡をしたのだが、着信拒否された。関わりを持たないことが自分にできることだと悟り、彼は以来、いっさいの連絡を絶った。

 亜由美さんとは、今もときどき「友だちとして」会うことがある。彼女に対しての性欲はなくなった。あのころ、どうしてあれほどまでに彼女を求めたのか、今となっては記憶が定かではないらしい。

「何年もできなくて、ある日、突然できるとわかってケモノになっちゃったんでしょうね。今振り返ると、20代は狂気の時代でした。自ら望んだわけではなかったけど、いろいろなことに巻き込まれたり流されたりしてしまった。30代はリハビリ期間だと思って過ごそうかなと思っています。今は特定の彼女はいませんが、40歳までには今度こそ、ちゃんとした家庭を作りたい」

 彼にとってのちゃんとした家庭とは、「夫と妻の間に上下関係がなく、お互いに居心地がいいと思える空間と雰囲気があること」だという。2度の結婚と離婚で、彼なりに学んだことがあるようだ。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月27日掲載

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