「京都・亀岡暴走事故で加害者が出所」に遺族の父親が思うこと

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仮釈放が検討されていた1年前

 2012年4月、京都府亀岡市内で登校中の児童と引率の保護者の列に軽自動車が突っ込んだ事件で、3人が死亡、7人が重軽傷を負った。軽自動車のハンドルを握っていたのは18歳の少年で無免許、そして居眠り運転だった。少年には不定期刑が下って服役していたが、この9月に満期出所した。子供に付き添っていた娘・幸姫(ゆきひ)さん(享年26)と、お腹の中にいた7カ月の孫を一瞬にして亡くした中江美則さん(58)が思いを語る。

 中江さんのもとに大阪高等検察庁の検察官らから、【処遇状況等に関する通知書】と題する書類が届いたのは今年9月24日のことだった。

 中江さんは、

「加害者が少年刑務所から9月22日に釈放されたことを通知するものでした。従事した作業は主として衛生係、運搬係、計算係、受刑態度は『特に良好』、改善更生の意欲の喚起および社会生活に適応する能力については、『その見込みが高い』という評価が付されていました」

 と明かし、これまでの経緯について触れる。

「実は去年6月、当局から『1年以内の仮釈放の可能性があります』という通知を受けて、意見陳述をしました。当局からは“陳述するなら意見は聞かせてもらうが、意見はそもそも反映されず、本人にも伝えない。それでも良かったら意見を陳述してください”ということでした」

本当に更生するのか甚だ疑問

 中江さんが思いの丈を綴った意見陳述はざっと以下の通りだった。

《胎児を含む4人の生命を奪った加害者が10年にも満たない刑期で出所することは、被害者遺族として耐えられない。加害者が正当な報いを受けたと感じて、私たちは生きて行くことができると思う》

《ならば無期懲役や死刑なら正当なのかというとそういうことではない。刑務所の中に長くいるのが良いと思っているわけでもない。ではどういうことなのか。刑務所の中の教育や指導だけで、本当に更生するのか甚だ疑問に思っているということに尽きる》

《私(=中江さん)は犯罪更生保護団体「ルミナ」の代表として、刑務所で講演したり、被害者の視点を取り入れた教育に協力したりしているが、そういったプログラムで受刑者がどう変わるのか判然としない。受刑者の反応はどうなのか、反省の言葉を述べたとしてそれは本心からなのか全くわからない》

《加害者は刑務所という制約のある環境で刑に服したと言うかもしれない。それはその通りだが、彼らはやがて一般社会に出て自由に暮らす日を目標に希望を持って生きている。他方、何の過失もなく生命を奪われた被害者、その遺族、重傷を負った幼い子供たち、またその家族は明日への希望が持てないままだ。加害者は希望を持ち、被害者遺族らは希望のない苦しみの中で生きるしかない理不尽さを痛感している》

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