がん患者の4分の1の死因「がん悪液質」とは 体重減少で衰弱、期待の治療薬が登場

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治療薬が登場

 ただし治療を始めるといっても、これまでは、栄養療法や運動療法などがあるだけで、がん悪液質に有効な治療薬は存在しなかった。それだけに今回、世界ではじめて承認され、販売が開始された治療薬には大きな期待が寄せられている。

「エドルミズ(一般名:アナモレリン塩酸塩)」は、グレリン様作用薬とされている。グレリンとは、食欲と体づくりにかかわるホルモンのことで、空腹になると主に胃から分泌されて脳に作用して食欲を高め、成長ホルモンの分泌を促して筋肉量を増加させる。つまり「エドルミズ」は、その有用なホルモンと同様の働きをする薬なのだ。

「グレリンを薬に使うというアイデアは昔からありましたが、グレリンは血液中で活性化する時間が短すぎるため、薬としての開発は難しかった。アナモレリンはそのグレリンと同様の働きをしながら、長時間安定して血液中に存在するので非常に使いやすいのです」(高山教授)

「エドルミズ」は1日1回2錠(100mg)を空腹時に服用する経口薬で、薬価は246・4円/錠。今のところ適応されるのは、非小細胞肺がん、胃がん、すいがん、大腸がんにおけるがん悪液質である。

 高山教授は、2010年頃からこの治療薬の治験に携わってきた。最初は、非小細胞肺がんにともなうがん悪液質の患者174名を、アナモレリン群84名とプラセボ(偽薬)群90名に分けて、12週間にわたって薬を投与した。

 その治験の結果、アナモレリン群で、平均1・38キロ除脂肪体重(骨格筋)が増加した。プラセボ群では平均0・17キロ除脂肪体重が減ったので、明らかな有意差が生まれたのだ。アナモレリン群では、最初の3週間で体重が増え、そのまま12週間その体重が維持された。この治験ではQOLに関する調査も行われ、食欲の増加も明らかに認められた。

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