がん患者の4分の1の死因「がん悪液質」とは 体重減少で衰弱、期待の治療薬が登場

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体重が8キロ増加したケースも

 さらに消化器がん(胃がん、大腸がん、すいがん)にともなうがん悪液質の患者49名を対象にした治験も実施した。アナモレリンを12週間投与した結果、除脂肪体重が投与前よりも増加あるいは維持した“レスポンダー(治療効果が確認された患者)”は63・3%に及び、平均1・89キロの除脂肪体重の増加がみられた。

「反応の早い患者さんの場合、1~2日で食欲が改善しました。“先生、すごく食べられるようになりました”と報告してくれる患者さんもいて、家族の方々からも喜ばれました。治験を通して、単にエネルギーを摂取しやすくなったという以上に、全般的に患者さんがエモーショナルに元気になったという印象を受けました。体重増加が著しかった例では、体重が45キロまで減少していた人が、53キロに回復したというケースがありました。8キロもの増加で、私たちもそこまで増えるとは予想していませんでした」

 と、高山教授は驚きをもって振り返る。

 なお薬の副作用としては、心電図異常や、糖尿病の悪化、肝機能障害などがある。心電図異常は、脈が遅くなる徐脈などがおもな症状で、自覚症状が現れることはまずないという程度だった。糖尿病の悪化については、5%ほどの頻度で血糖値が上がる例があった。また肝機能の検査値に異常が見られるケースもあったが、治療が必要になる患者はいなかった。

「副作用はあるけれども、薬の効果のほうが大きいというのが治験の結果です。ただし治験では、比較的元気な人が対象だったので、がんが進行した全身状態の悪い患者さんに、どのくらいの副作用が起こるのかというデータはまだありません。それについては、市販後調査のデータを見ながら、慎重に投与を判断していく必要があると考えています」

 また、心筋梗塞や狭心症など心臓に障害があって治療薬を服用できないケースもあるので、服用にあたっては必ず主治医に治療歴を伝える必要があるという。

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