がん患者の4分の1の死因「がん悪液質」とは 体重減少で衰弱、期待の治療薬が登場

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診断基準は

 がん悪液質のメカニズムとは、どのようなものなのか? 高山教授はこう説明する。

「がん悪液質で体重が減るのは、がんによって脂肪の分解が促進され、筋肉の合成も減って分解が進むからです。がんがあることで慢性的に炎症が起こり、体を守る免疫反応として炎症性サイトカインが活性化することで、このような代謝異常が起こります。また、がん細胞自体からも、脂肪や筋肉の分解を促進させる物質が分泌され、代謝異常を加速させます。つまりがん悪液質という病態があると、安静にしていても常にエネルギーを使い続けている状態になり、燃やしてはいけない骨格筋まで分解してしまうのです。いわば、家の中にいて暖を取るために、使ってはいけない柱まで切って火にくべている状態といえます」

 さらにがん悪液質になると、炎症性サイトカインや脂肪細胞から、脳の視床下部へ食欲を抑えるように指令を出す物質が分泌されるため、食欲も低下してしまう。食欲が出ない上に、たとえ食べることができても、体重の減少が止まらなくなるのだ。

 では、がん患者は自分ががん悪液質であるかどうかを、どのように判断すればよいのだろうか。がん悪液質はあくまでも病態であるため、体重減少などの症状で判断するしかない。現在の診断基準では、次の3項目の一つでも当てはまる場合、がん悪液質と判断される。

(1)過去6カ月間の体重減少が5%超。

(2)体格指数(BMI、体重÷身長÷身長)が20未満で、体重減少が2%超。

(3)サルコペニアで体重減少が2%超。

 サルコペニアとは、加齢や病気などによって筋肉量と筋力が低下した状態のことをいう。サルコペニアかどうかは、患者自身が簡単にチェックできる「指輪っかテスト」という方法がある。ふくらはぎの最も膨らんだ部分を両手の親指と人差し指で囲み、すき間が空く場合はサルコペニアの可能性が高いという。

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