輪転機大手「東京機械」の買収防衛策に投資会社が激怒 裁判所も判断先送りの異常事態

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

「どこまでまともな会社なのか」

 東京機械側にも言い分がある。8月以降、東京機械はアジア社に急速な大量買い付けを止めるよう再三に亘って警告を発してきたのに、アジア社は止めなかった。

 それだけでない。アジア開発キャピタルの過去には不明な点も多い。そもそもの発祥は倉庫株式会社で、2003年には株式会社NDB、04年にはジェイ・ブリッジ株式会社、10年にはアジア・アライアンス・ホールディングスと次々に商号を変えている。ジェイ・ブリッジ時代には一部メディアで、「ボロ株を操って荒稼ぎする資本のハイエナ」などと呼ばれた。アジア・アライアンス・ホールディングスに商号変更する際には香港大手ノンバンクのサンフンカイと連携を開始し、15年に商号は現在の「アジア開発キャピタル」となったが、現在もアジア開発キャピタルの筆頭株主はサンフンカイである。

「どこまでまともな会社なのか、まったくわからない。こんな会社に150年近い歴史と伝統を持つ東京機械の経営権を譲り渡すわけにはいかない」と、東京機械の幹部が息巻くのも、無理からぬものがある。

 しかし、東京機械が買収防衛策発動の動きを見せたことで、逆にアジア社は「防衛策が発動されれば自分たちの利益(取得した株式の価値)が損なわれる」と、さらに買い増し、結局4割もの株式を取得した。

あまりにも案件が難しい

 東京機械が発動しようとしている買収防衛策は、アジア社以外の一般株主に大量の新株を付与することでアジア社の保有割合を強引に低下させるもの。現在、アジア社は東京機械株式の4割を握っているが、もしこの防衛策が発動されれば保有割合は一気に3割、あるいは2割台にまで落ちる。

 憤慨するアジア社と、会社を護るための当然の措置だと主張する東京機械。判断を委ねられたのが裁判所だったわけだが、冒頭で記した通り、裁判所も頭を抱えた。司法関係者が明かす。

「前代未聞の事態に、東京地裁はかなり迷ったようです。当初は10月の3週目にも地裁判決を出し、それを不服とする側が抗告をしたとしても、遅くとも株主総会が開かれる22日までには最終判断を下すつもりでいました。ところが、あまりにも案件が難しかった。10月8日、地裁は東京機械とアジア社、両社を招いてヒアリングを実施しています。落としどころがないかを探ったのでしょう。しかし、落としどころは見つからなかった。両社、一歩たりとも引かなかったからです。地裁は『22日までにはとても判断できない』と、先送りせざるをえませんでした」

 東京機械は今月22日の臨時株主総会を、予定通り決行するという。当日、筆頭株主であるアジア社が反発するのは必至で、「荒れに荒れる総会になる」(先の経済記者)と言われている。

デイリー新潮取材班

2021年10月20日掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。