「ポスト原」は原しかいない…巨人がまだ阿部政権に慎重な理由【柴田勲のセブンアイズ】

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バトンタッチには慎重

 秋風が吹き始めて、球界人事も動き出した。西武の辻発彦監督、日本ハムの栗山英樹監督、そしてソフトバンクの工藤公康監督が今季限りで退任することが決まったようだ。

 そして巨人・原監督は来季も続投する方向だと一部で報じられた。原の気持ちひとつだろうが、現在の巨人で他にやれるような人材はいない。もちろん、5日に1軍の作戦コーチに配置転換となった阿部慎之助2軍監督が「ポスト原」の最有力候補だが、巨人はもう1、2年は勉強させたいと考えているはずだ。

 というのも、15年に第2次政権を終えた原監督が辞表を提出して、その座を高橋由伸に譲ったものの、2、4、3位で結果を出せなかった。高橋は指導者としての経験をほとんど積まずに指揮官となった。当時、禅譲された本人が「エッ!」とビックリしたと伝え聞いた。監督への準備期間もなく手探り状態で指揮を執っていたようだ。

 巨人はだからこそ、原監督から阿部へのバトンタッチには慎重なのだろう。巨人フロントはそこを踏まえて、「君しかいない。全面的に協力する」となるのではないか。

 第一、現在のチーム状態で阿部に禅譲しても苦労するのは確実だ。戦力をキッチリ整えて阿部に渡す。そして阿部はもっと経験を積む。巨人はそんな青写真を描いていると思う。

巨人はクジ運がない

 で、今年のドラフトである。巨人は1位指名で大学No.1左腕の隅田知一郎(ちひろ)投手を指名したが4球団競合の末に敗れた。巨人はクジ運がないからなあ。これで11連敗だ。

 でも、外れ1位で関西国際大の右腕・翁田大勢投手の交渉権を獲得した。翁田はスリークオーター気味のフォームで最速157キロを誇る。伸び代が大きい投手という評判だ。

 巨人は菅野智之、山口俊、戸郷翔征、高橋優貴、メルセデスの5人で先発を回しているが、イキのいい投手が欲しかったところだ。阪神、ヤクルトを見ると、「オッ、これは」という投手が結構いるものの、巨人にはあまり見当たらない。入団して新風を巻き起こしてほしい。

 巨人は12日から東京ドームに阪神を迎えての3連戦だ。まだ戦いは終わっていない。CSはまず間違いないだろう。野手は1本のヒットを貪欲に狙い、投手は1イニングを0に抑えて積み重ねる投球を心がけることだ。巨人の首脳陣はなんとかCSまでに態勢を整えてもらいたい。

 ファンはガックリきて泣いているが、OBたちも同じだ。このままで終わってほしくない。

(成績は11日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月12日掲載

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