夫が子供を「連れ去り」 面会交流でしか我が子に会えない母親の「月1回4時間の子育て」

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 ある日突然、妻や夫が子供を連れて家を出て行ってしまう「実子連れ去り」。一方の親だけが家から締め出される「追い出し」も多発している。引き裂かれた親子は、どのように親子関係を維持していくべきなのか。日常的に子供に接する機会を奪われ、月1回4時間しか会うことしか許されなくなった母親の話を聞いた。(ライター・上條まゆみ)

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思わず熱く語ってしまう

「お母さん、人気ユーチューバーのエッセイが欲しいんだけど」
「じゃあ、本屋さんに行こうか」

 ある土曜日の昼下がり、佐藤佳寿子さん(仮名・46歳)は、長男(14歳)と次男(11歳)を車に乗せて、郊外の大型書店に向かった。聞いたことがないユーチューバーの本を探して、店内をウロウロと歩き回る長男。漫画本のコーナーに張り付く、まだ幼い次男。

「本、なかった、もういいや」
「え、ちゃんと探したの?」

 あっさりと諦めてしまう長男が不甲斐なくて、佳寿子さんは店内の検索機に連れていった。彼が欲しかった本は簡単に見つかった。

「何でもすぐに諦めたらいけないよ。欲しいって言ったら、空から降ってくるわけじゃないんだよ。欲しいものは、自分の手で掴み取らないと!」

 思わず熱く語ってしまう自分がいた。

義母との同居から始まった夫婦関係の破綻

 一見すると、ごく普通の親子にありがちな日常の一コマだ。だが、佳寿子さんと子供たちにとって特別な時間である。今日は月に1回だけ許された面会交流日。彼女は月にたった4時間しか、我が子に向き合うことができないのだ。

 夫婦関係の破綻は、義母との同居がきっかけだった。義母の意向を優先して家のことを何でも決めてしまう夫。しまいには、佳寿子さん抜きで大事なことが二人で決められてしまうようになってしまった。改善を求めても一向に直そうとしない夫に勘忍袋が切れた佳寿子さんは、8年前に家の近くにアパートを借り、子供を連れて家を出た。あくまで一時的な措置だった。佳寿子さんは離婚することになっても、夫と子供を引き裂く気などなかった。

 だが、2日後、夫は強引に子供たちを連れ戻してしまう。そして、それからはいくら頼んでも、子供に会わせてくれなくなったのだ。最終的には家庭裁判所に訴え出たが、5年後、家裁が認めたのは、月1回、たった4時間の面会交流のみ。理不尽な状況に納得できていないが、現時点で佳寿子さんになす術はない。

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