元公安警察官は見た 在日外国人によるパジェロ“アフリカ密輸”に手を貸す外交官 

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氷山の一角

「北関東で、アジアの某国出身の外国人が中古車ディーラーを営んでいました。敷地は塀で囲まれ、中古車を解体していましたが、そこでは盗難車も扱っていたのです。三菱自動車のパジェロを5、6台集めて解体し、パーツを自分の国の外交官を通じ、外交行嚢でアフリカに密輸したのです」

 自動車のパーツを普通に輸出すれば関税がかかるが、外交行嚢だと無税で荷物をチェックされることもない。

「外交官は、中古車ディーラーから指定された荷を外交行嚢として手続きするだけで手数料をもらっていました」

 パジェロのパーツは、密輸先であるアフリカのある国で組み立てられたという。

「パジェロを組み立てる際、同じ車のパーツではなく、他のパジェロのパーツを混ぜたそうです。盗難車だと特定されないためです。何故パジェロかといえば、砂漠のあるアフリカでは日本の4WDは人気が高いからです」

 この密輸は、アフリカの現地の警察によって事件化された。

「アフリカでは、自国産業保護のため、外国車の輸入が厳しく規制されています。違法に組み立てられたパジェロが現地警察の取り締まりに引っかかったのです。車のパーツの入手ルートをたどったところ、横浜港から船便で送り出された外交行嚢だったことが判明しました」

 そして、日本の某県警が荷主を追跡し、中古車解体工場にたどりついたという。

「こうして在日外国人による盗難車ビジネスが摘発されました。外交行嚢が悪用されたことが外務省に報告され、問題の外交官がいる大使館のナンバー2は事情聴取されました」

 今回のケースは、たまたま現地で摘発されたため、密輸が発覚したわけだが、

「外交行嚢は開封厳禁といっても、中に違法なものが入っていると疑うべき根拠があれば、所有国の外交官立ち合いのもとで中を調べることが国際的に認められています。空港で麻薬探知犬が外交行嚢に吠えたとか、タレコミがあった場合も同様です。しかし、外交行嚢で密輸が発覚するのは、氷山の一角です」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

2021年10月8日掲載

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