1億総「おひとりさま」時代に必要な“広く浅い”交遊関係 終活より大切なものとは

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「死に方」の前に「生き方」

 こうやって、気軽にコミュニケーションがとれるコミュニティーをどう見つけ出すかが、孤立や孤独に陥らないポイントです。

「おひとりさま」というと、終活をイメージする人も多いでしょう。私自身も終活関連の資格を持っていますが、実は終活という言葉はあまり使わないようにしているんです。終活って、ビジネスになってしまっていますから。残された人たちに迷惑をかけないようにお墓を買っておきましょう、業者に頼んで断捨離を進めましょうといった具合に。危機感、恐怖感を煽(あお)って購買に走らせるというのは、マーケティングの世界の常道なんです。

 でも、終活って本来は人生の集大成だと思うんです。それまでの人生の点と点がつながった最終的なものが終活であって、死期がだんだん近づいてきたから「死ぬため」の準備をしようというものではない気がします。老後資産を残しておいたとしても120歳まで生きて食いつぶしてしまうかもしれないし、遺書を書いても渡すべき家族に渡せなかったりで、つまりゴールがない。そういうことを一生懸命やるよりも、「生きるため」のことを考えるべきです。「死に方」の前に「生き方」ですよね。

 そう考えるとおひとりさま、またおひとりさま予備軍が優先すべきは、やっぱり個立有縁の環境整備だと思います。

 私自身、準備は進めていて、例えば先ほどの宝塚への遠征(長距離の移動を伴う観劇旅行)のように、広く浅い人間関係を楽しんでいます。同級生の友だちからは、「夫を放っておいて、料理も用意せずによくひとりで遊びに行けるね」と言われたりするんですけどね。

 でも、もし私が先に死んだら夫はおひとりさまになって、自分で料理を作らないといけないんですよ。そうなってから初めて夫が食事の問題に直面するほうが大変です。それは逆に、私が死ぬまで、夫におひとりさまの準備をさせずに見離していることになります。

 何も備えないで「いきなりおひとりさま」。それこそ個立有縁ではなく、孤立無援の始まりだと思うんです。

廣川奈美(ひろかわなみ)
「ひとりとひとり」編集長。1977年、福岡県生まれ。販促会社、出版社などの勤務を経て、デザイナーとして独立。20代から「ソロ活」をはじめ、現在、日本初のおひとりさまメディア「ひとりとひとり」の編集長を務める。「一般社団法人 ひとりとひとり」の代表理事でもある。

週刊新潮 2021年9月30日号掲載

特集「誰もがいずれは独り身に…1億総『おひとりさま』時代に『孤立無援』ではなく『個立有縁』」より

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