ネガティブしか強調しない「コロナ報道」の信頼性 スポーツ紙の「球団アゲ記事」と同じでは(中川淳一郎)

中川淳一郎 この連載はミスリードです 国内 社会 週刊新潮 2021年9月30日号掲載

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 コロナ報道において、メディアの“逆スポーツ新聞化”が止まりません。とにかくネガティブなことを言い続け、恐怖を煽ることしか考えていない。逆スポーツ新聞化の意味は、スポーツ新聞は特定の野球球団に対し、希望を見出せることを報じ続けるからです。

 たとえばシーズンを最下位で終えた場合は、「後半若手の成長が著しく来年に期待。収穫の多いシーズンだった」となり、その後はこう続く。「ドラフト、〇〇(球団名)は文句なしに大成功」「新助っ人・××はメジャー△△発(本塁打数)。これで4番は決まりや!」「オープン戦は絶好調、このままの勢いで突っ走る」「開幕ダッシュ成功、ヤバい、これは優勝してまう!」「5月に失速、ただし、〇〇は夏に例年強い」そして最下位になったら再び「来年に期待」になり、以下、延々ループするわけです。

 この手のポジティブ報道ばかりだと、一体何が本当なのか分からない。しかし、特定球団のファンがその新聞を買う場合が多いため、希望を煽らなくてはならぬ事情は分かります。具体的なスポーツ紙の見出しを見てみます。

〈逆方向も軽々‼メジャー通算92発‼左の大砲 阪神新助っ人合意 ボーア バースの再来や〉(デイリースポーツ 2019年11月28日)

〈止まらない衝撃!阪神・ロサリオ、2戦連発シーズン95本塁打ペース〉(サンスポ電子版 2018年2月13日)

 結局ボーアは1年で阪神を去り、ロサリオはわずか75試合・8本塁打に終わり自由契約に。両紙の見出し、実際にプレーする前はとんでもない期待を抱かせてくれますが、多くの場合は期待外れに終わる。

 そして今年のコロナ報道の見出しを見てみましょう。

〈感染症専門家 東京のコロナ新規感染者は7日連続前週下回っても「まだ1カ月厳しい」〉(デイリースポーツ電子版 8月30日)

〈コロナ感染者減少傾向も専門家は警鐘「人流減っておらず実態反映していない可能性」〉(FNNプライムオンライン 9月7日)

〈関口宏 感染者「東京都は減っているがいいんですか」識者「不自然な減り方」サンモニ〉(デイリースポーツ電子版 9月12日)

〈専門家「冬より前に第6波の可能性」 感染減で緊急事態宣言解除なら〉(FNNプライムオンライン 9月14日)

 これは、いずれもテレビ出演本数上半期2位の専門家(156番組・昨年は年間232番組で専門家中4位)である松本哲哉・国際医療福祉大学教授による発言がベースとなっています。常にコロナのヤバさと「人流」を減らすことの重要さを説く人物ですが、自分の過去の発言通りになっていない状況に焦っているのでしょう。人流が減っていないのに陽性者が減ったことには「不自然」と言い放つ。

 これで「専門家」ですか? スポーツ紙の煽り記事を書くのはあくまでも記者ですし、実害はない。野球評論家(野球の専門家)は、「夏になれば投手に疲労が見えてきて打撃力の強いチームが勝つ」や「〇〇選手の負傷離脱で得点力減を懸念」などと良いことも悪いことも言う。人々の行動を制限させ、実害をもたらすコロナの専門家とは違うのです!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。