嫌われ河野太郎はどこへ行く…バブルが弾けて側近議員は「政治生命も危うくなる」

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「3A」との距離感

 2つ目の敗因は「3A」との距離感にある。これは石破氏にも共通しているが、強固な保守層に支えられる今の自民党内で安倍氏、麻生太郎副総理、甘利明元経済再生相の「3A」の影響力は絶大で、その距離が総裁選の行方を大きく左右する。過去4回総裁選に出馬し、敗れた石破氏が安倍氏らから嫌煙されているのは有名だが、脱原発や女系天皇容認といった過去の言動から河野氏も警戒されていた一人だ。東京都議選など最近の各種選挙で自民党から本来の支持層が離れており、「保守層をしっかりと固め直すべきだとする『3A』と、ウイングを広げて幅広い支持を得るべきだとの河野、石破両氏のスタンスは違う」(細田派若手)。保守派を代表して立候補した高市氏が当初は「泡沫候補」と見られながらも、安倍氏らの全面支援で予想外の健闘を見せた意味は小さくない。逆に、歯に衣着せぬ言動が好感されてきた河野氏が持論を封印して「3A」に協調すれば「ブレた」と映るリスクを負うことになる。

 河野氏には、省庁幹部や元官僚、民間シンクタンクなどにブレーンがいる。自身の政策を磨き上げ、その発信力を支えてきたチームといえるが、その一人も「安倍前首相に嫌われていると思われた段階から、向かってくるネット攻撃が激しくなった。総裁選で勝利しない限り河野氏の政策は実現できないわけだから、当面は封印せざるを得ないのは仕方ないかもな」と悔しがる。「高市氏の応援を通じて本来、自民党はどうあるべきかをしっかり訴えることができた。この論戦によって離れかかっていた多くの支持者がまた自民党に戻ってきてくれるのではないか」と胸を張った安倍氏の影響力は、5年超も幹事長を務めた二階俊博氏に代わるキングメーカーとして今後さらに増大するだろう。

 自身が掲げる「脱原発」などに財界のアレルギーが強く、安倍政権時代の今井尚哉首相秘書官は業界団体にメッセージを送っていたと、河野氏周辺はにらむ。これに加えて、今回は麻生派が自派閥の河野氏と、甘利氏らが推す岸田氏に支持が割かれていた点も忘れてはならない。「『3A』との関係を無視した戦いは今の総裁選の仕組みではあまりに挑戦的となる」(竹下派中堅)。

 かつて「若手のホープ」ともてはやされた河野氏も今や58歳。今後の総裁選について「またチャンスがあればしっかりやっていきたい」と語った河野氏は、いかなる道を選択していくのか。舌鋒鋭く政権批判を展開する「石破化」の道を突き進み、リベラル勢力の結集を図って「3A」に挑むのか、それとも「ブレ」批判に耐えながらも「3A」に抱きついて次を待つのか。他候補を閣僚や党幹部で起用する意向を示した岸田新総裁が差し伸べる手にどのように応えるかによって、河野氏の政治生命がかかる進路が見えてきそうだ。

小倉健一/イトモス研究所所長

デイリー新潮取材班編集

2021年10月1日掲載

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