セブン-イレブンに並ぶ「ダイソー」「ロフト」 大手コンビニが日用品に力を入れる理由

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脱“緊急購買”

 なぜ、各社ともにこの時期に日用品ジャンルに力をいれるのか。先の渡辺氏は次のように解説する。

「マグネット消費、つまり主力である中食(弁当など)の“ついで買い”を誘うため、魅力的な日用品に力をいれようという機運は、もともと各社ともにあったと思われます。そうした動きをコロナ禍が後押しした印象ですね。コロナ以降、都市部の中心にあるコンビニ店舗の売り上げは1~3割減ったといわれています。テレワーク推進で出社しなくてもよくなったこと、また街に遊びに出かける機会が減ったためです。とくにテレワークに関しては、コロナが収まっても続く可能性があり、そうなると都市部の店舗の売り上げは戻らない可能性も高く、コスメや文具などの高単価商品を充実させ、少しでも売り上げをあげようという戦略になります。

 反対にコロナになって好調の住宅立地の店舗も、日用品を拡充するメリットがあります。住宅街の店舗では、都市部の店以上に“身近なお店”であることが求められます。緊急購買だけではなく、普段から日常使いとして日用品を買ってもらえるようなコンビニになるべく、各社力をいれているわけです」

 もうひとつ、ライバル業界を意識しての動きもありそうだ。

「近年、食品を取り扱うドラッグストアが増えています。主に扱うのは加工食品や冷凍食品ですが、そこで売られる日用品は安く“ついで買い”に適した店に変貌しつつあるのです。そんな動きに、コンビニも対抗する必要がある。その際、ドラッグストアではまず敵わない圧倒的な店舗数が武器になります。ダイソーや無印良品など組む側にしてみれば、店舗があればそれだけ多くの商品を置けますからね。また自社PBの日用品を開発するにも、たくさんの店舗に置けるだけの数を造らなければ、採算がとれません。商品開発をしていた私の経験からいうと、適正な価格や品質を担保するための製造の最低基準は『3万個』。コンビニ業界3位のローソンでも1万4500店ある一方、ドラッグストアではもっとも多いツルハホールディングスが約2500店舗であることを考えると、コンビニのような取り組みは商品開発の取り組みはドラッグストアはしにくいです」

 とはいえ、上記の日用品の取り組みがすべて成功するかといえば、そうでもなさそうだ。

「ローソンがウーバーイーツを導入するなど、いまコンビニでは宅配需要も高まっています。日用品に関しては、緊急購買の需要には引き続き答えつつも、今後は店舗の立地に応じて変化をつけた品揃えが求められるでしょう。たとえば、住宅地の店では求めやすい価格の品を増やす。セブンが扱う“ついで買い”しやすい価格帯のダイソーの商品は相性がよさそうです。すでにファミマはPBの100円均一コーナーを拡大していますし、またローソンも、今後は子会社である『ローソンストア100』の商品を展開することも可能ですね。セブンの例でいえば、ビジネス街や繁華街では『ロフト』路線でしょう。ただ、コンビニに卸さないメーカーの商品が並ぶ面白さはありますが、化粧水やシートマスクなど、すでにコンビニに置かれている商品の数を増やすだけでは、今の化粧品売り場の延長にしかならず、売上は期待できない気がします。すでに化粧品の売り上げが良い店舗などで、アイメイクなどコンビニで扱われることが少ない商品を新たに増やす、といった形をとれば、新規顧客の獲得が期待できるでしょうね」

デイリー新潮取材班

2021年9月22日掲載

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