元サッカー日本代表・鈴木啓太が「うんちバンク」を創設? アスリートの便を分析してサプリ開発

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腸内細菌ビジネスへ

「アンダー23日本代表選手として臨んだアテネオリンピック予選の、UAEとのアウェー戦、原因は不明ですが、23人中18人のチームメイトがお腹をこわしました。キックオフの時間が近づいているのに、トイレのボックスは満室。そんな状況でも、僕はコンディション万全でした。自分の腸内環境に自信を深めた出来事でした」

 鈴木さんは浦和レッズでキャプテンを務めた。日本代表にも選ばれ、国際Aマッチに28試合出場している。一流選手の多くは、引退後のセカンドキャリアに指導者や解説者などを考える。しかし、鈴木さんはうんちを集め、腸内細菌を研究する道を選んだ。

「14年に不整脈が見つかって、自分の思うようなプレーができなくなってきました。そして、忘れもしない11月3日。横浜F・マリノス戦の試合中、明らかに異変を感じました」

 翌15年のシーズンで鈴木さんは現役引退を決め、そしてこの年に人生を左右する出会いがあった。

「知り合いのトレーナーに、うんちの記録を取るアプリをつくるベンチャー企業のことを聞きました。その会社は、観便し、専用のアプリで自分のうんちを記録することによって健康管理を推奨していました」

“観便”とは、自分のうんちを見ることだ。

「僕が子どものころから行ってきたことをビジネスにしている人がいたのです。トレーナーに話を聞いた3日後にはその企業の社長のもとを訪れていました」

 そこでは、専門的な仕事をしている人やまったく違う体形の双子など、特徴的な人のうんちを採取し、検査して、データをとり、人々の健康に役立てるビジネスを展開していた。

「専門的な職業の人や生まれや育ちが特徴的な人のうんちを調べると、発見があるかもしれないんですよ」

 と社長に言われた。

「アスリートも専門職と考えてもいいですか?」

 鈴木さんは訊ねた。

「はい」

 そんな会話を交わし、鈴木さんは腸内細菌ビジネスを具体的にイメージする。

「それまでは母親の教えやサッカー選手としての体験などで食事を選び、お腹に鍼灸治療を施していました。手探りでの健康管理です。さらにさまざまな専門家の話をうかがい、自分がやってきたことが間違っていないというか、かなり大切なことだとわかりました」

 このころ、長く交流のあるサポーターから、年齢を重ねるとなにかしら身体に問題が起き、スタジアムに行きづらくなる話を聞いた。選手もサポーターも、いつまでも若くはない。健康の大切さを再認識することが多く、起業を決めた。それが「AuB株式会社」だ。自己資金4千万円を投じ、エンジェル投資家から1億3千万円を調達。本気だった。

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