イチローが初のサヨナラ打、巨人はわずか2分で大逆転…「奇跡の優勝決定戦」の一閃

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「本塁打しか狙わなかった」

 プロ野球のV争いもいよいよ最終局面を迎えている。ファンにとっては、「今日勝てば優勝」という試合にすんなり勝てば言うことはないが、「今日はダメか」と諦めかけた劣勢の終盤に奇跡的な同点劇、さらにはサヨナラタイムリーで優勝決定というドラマチックな幕切れもまた、味わい深いものがある。そんな球史に残る優勝ドラマで、土壇場のひと振りでVを決めた男たちを振り返ってみたい。

 プロ入り後、初めて記録したサヨナラ安打でチームを優勝に導いたのが、オリックス時代のイチローである。

 1996年9月23日の日本ハム戦。2年連続Vまであと1勝のオリックスは、8回に逆転を許し、5対6で迎えた9回裏も2死無走者。前年は西武球場での胴上げだったことから、地元で初の優勝決定の瞬間を楽しみにしていた地元・神戸のファンも「明日に持ち越しか……」とため息をついた。だが、あと一人で敗戦という窮地から、「本塁打しか狙わなかった」という代打・DJが起死回生の右越え同点ソロ。試合は延長戦にもつれ込んだ。

「最高というものを通り越したもの」

 そして10回。「イチローの打席でいい場面をつくりたかった」という先頭の大島公一が右前安打。無死一塁から3番・イチローは初球をファウルしたあと、島崎毅の2球目をとらえ、糸を引くような打球が左翼線を破った。レフトのデューシーがクッションボールの処理を誤る間に、大島が生還し、オリックスのパ・リーグ連覇が決定した。

 二塁ベースをオーバーしたところで、勝利を知ったイチローは、空中高く2度にわたってジャンプ。プロ1472打席、605安打目で初めて記録したサヨナラ安打だった。たちまちナインの歓喜の輪が広がるなか、イチローは輪の横に飛び出し、オリックスファンで埋まるライトスタンドのファンに右手を突き上げて再びジャンプした。

「まだ22年間しか生きてませんけど、初めての気持ち。最高というものを通り越したものです。(ライトスタンドに向かって飛んだのは)喜んでくれるファンの気持ちがすごく伝わってきて、僕たちだけで喜んじゃいられないと思ったら、そうなってて」(イチロー)

 前年から「がんばろう神戸」を合言葉に、震災からの復興を目指す地元ファンとともにペナントレースを戦いつづけてきたイチローにとって、「9・23」は生涯忘れられない日になった。今季のオリックスは、この時以来、25年ぶりのパ・リーグ優勝を目指して、首位争いを展開している。

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