「TOKYO MER」最終回 喜多見幸太だけではない究極の偽悪者「音羽尚」の面白さ

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 7月期ドラマで一、二を争う高視聴率を記録している「日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」(日曜午後9時)が9月12日に最終回を迎える。どうして大当たりしたのかというと、主人公の凄腕医師・喜多見幸太に扮した鈴木亮平(38)ら出演陣の演技も良いが、黒岩勉氏(48)による脚本が出色だからにほかならない。

 視聴者を引き付けるためなら、なんでもする。そんな思いが伝わってくる脚本だ。特に終盤の展開はエグイとすら言える。

 事件・事故現場での死者をゼロにするため、東京都知事の赤塚梓(石田ゆり子、51)が救命救急チーム・MERを設立したが、その初めての死者はリーダー・喜多見幸太の愛する妹である涼香(佐藤栞里、31)だった(第10話)。

脚本の面白いドラマの強さ

 そもそも物語の設定からして抜群にうまかった。救命救急ドラマは既にやり尽くされたと言ってよく、新味は出しようがないと思われていたが、手術室や治療設備を完備したERカーを導入したことにより、可能性が無限に広がった。言うまでもなく、こんな車は実在しない。

 MERの医療現場はトラックの運転室内(1話)、鉄骨落下現場(2話)、立てこもり事件現場(3話)、トンネル天井崩落現場(4話)……。従前の救命救急ドラマでは考えられない。

 おまけに鉄骨落下や銃撃、ガス爆発などの危険が迫る中で決死の医療活動を行うのだから、ほかの救命救急ドラマとは緊迫の度合いが全く違う。

 ここで9月第1週(8月30日~9月5日)の民放ドラマ視聴率ベスト5を見てみたい。世帯視聴率の上位から並べた。

(1)TOKYO MER(TBS)世帯13.5%、個人全体7.9%、コア(13歳~49歳)4.7%

(2)緊急取調室(テレビ朝日)世帯12.4%、個人全体6.8%、コア3.3%

(3)ハコヅメ~たたかう!交番女子~(日本テレビ)世帯11.8%、個人全体6.8%、コア5.9%

(4)刑事7人(テレビ朝日)世帯10.9%、個人全体5.9%、コア1.5%

(5)ナイトドクター(フジテレビ)世帯9.1%、個人全体5.3%、コア3.8%

「TOKYO MER」が2冠。コアは「ハコヅメ」がトップ。脚本の面白いドラマは強い。「ハコヅメ」の脚本もシリアスとコメディのバランスが絶妙だ。

喜多見とブラック・ジャックの共通点

 そもそも映画も演劇も「第一に脚本」と明治期から言われ続けてきた。それは海外も同じ。米国ハリウッドの名匠だった故ビリー・ワイルダーは「映画は8割が脚本によって決まる」との言葉を遺した。映画もドラマもどんなに名優をそろえようが、脚本が優れていないと、見る側を引き付けない。

「MER」の脚本のどこが具体的に良かったかというと、その1つは喜多見が過去にテロリストのエリオット椿(城田優、35)の命を救い、そのために服役歴があるというところ。単なる凄腕医師では親しみにくく、面白みにもかける。十字架を背負った主人公のほうが魅力的だ。

 好例はブラック・ジャック。医学界のメーンストリームから弾き飛ばされた無免許医だからこそ、読者を強く引き付けた。

 喜多見とブラック・ジャックにはほかにも共通点がある。患者の国籍、職業、性別、年齢を一切問わないところだ。

 ブラック・ジャックもテロリストの願いを聞き入れたことがある。命を救うことが一番大切だからだ(週刊少年チャンピオン1979年1月22日・29日号「復しゅうこそわが命」)。

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