「娘の心臓を握っていた」…3人死亡・7人重軽症「京都・亀岡暴走事故」 加害少年が9月出所で娘を亡くした父親の告白(前編)

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取り乱し、握っていたものとは?

「医師には、僕と娘婿の2人だけ入ってくださいと言われました。目の前に娘が寝かされ、先生らがそれを囲んでおられて。大きな機器には特に繋がれていなくて、脇腹が大きく切開され、そこに手を入れて直接心臓のマッサージをされていました。手の施しようがないのか、逆の方も切開しようかというような声も耳に入ってきました。助かるのか否かを聞いても明確に答えてくれない。医師の方では判断できないということだったんでしょう、“楽にしてやってください”という言葉がついて出て、看取る流れになっていきました。僕の位置からは娘の心臓が丸見えでした」

「ご臨終です」と医師から伝えられたとき、

「取り乱して、娘の心臓を握っていました。“ごめん、お父さんが心臓を止めた。勝手に俺が決められることじゃないし、決めたらあかんことやけど、俺が決めてしまった”と思ったのと、何とか生き返ってほしいなというのがあったから。でも、娘の心臓はすでに冷たかったんです。すでに死んでいたのに、医師の心臓マッサージはパフォーマンスやったんかなとも思いましたね」

 突然の事故で、最愛の娘とお腹の中の赤ん坊を亡くした中江さんは一瞬にして悲しみのどん底に突き落とされた。そして、地元の警察などが、加害者の家族に対して被害者たちの個人情報を漏えいするなど、失態を犯した。しかし、被害者遺族であるはずの中江さんに対してその後、厳しいバッシングが起きることになった。

「個人情報の漏えいについてはとても無責任だと思います。運転していた少年の父親が娘の携帯に電話してきて、“線香あげさせてくれ”と言ってきたんです。そっとしておいてほしかったんですが、携帯の番号をどこから聞いたのかと問うと“警察からだ”と言う。それで地元署の交通課長らが謝罪しに来たんですが、そこは署長から説明をいただきたいと伝えました」

 そして署長はやってきたのだが、

「娘が寝ている横で謝罪を一応はしてくれました。家の外を取り囲んでいるマスコミにも入ってもらっていたから、被害者遺族に署長が土下座しているシーンが全国ネットの番組で報じられたんです。僕は土下座を強要したことはないんですが、一方的に謝罪させている風に見える映像だったんでしょう。被害者が加害者になって、僕がバッシングされる瞬間だったのかもしれません」

(後編に続く)

デイリー新潮取材班

2021年9月9日掲載

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