官報の号外が前代未聞の8千ページに 価格は3万5750円

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 官報といえば、政府や各省庁が発表した公告や公文を掲載する冊子で、役所や企業、法律業務に携わる者にとっては必携の情報源だ。

 土日祝日などを除いて毎日発行され、「本紙」1号分は32ページ。だが、7月14日付の官報は前代未聞の8千ページ! 本紙に収まらない分として出される「号外」(158~162号)扱いで、積んだ高さは30センチにも及ぶ。

 内容は、日中韓など15カ国が参加する「地域的包括的経済連携協定」に関するもの。この協定にまつわる関税や投資、知的財産ほかの取り決めをすべて網羅的に掲載している。

 しかし、中身のほとんどは関税のかかる品目と税率を示した表だ。しかもマグロひとつとっても「びんながまぐろ」「くろまぐろ」「みなみまぐろ」などと細かく分類。協定発効後のそれぞれの税率を年毎にいちいち書き出している。農畜産物もその加工品も精密機器もすべてその調子だから、分厚くなって当然である。

「通常の官報は郵便で届きますが、この号外は大きな段ボール入りで、宅配便で届けられました」

 と話すのは、官報を定期購読して30年以上になる、医療ジャーナリストの牧潤二氏。厚労行政の情報を知るために必要なのだそうだ。

 官報は「本紙」1号分の価格が税込み143円。だが、今回の号外は税込み3万5750円もする。

 もしや、別途有料?

「いえ、定期購読している人は号外分を支払う必要はないんです。単独で買った場合は3万ウン千円するわけですね。公告が増える年度末の3月や、通常国会閉幕で新しい法律が公布される6月は号外が多いのですが、すべてひと月の定期購読代、送料込みの3841円に含まれていますよ」

 ちなみに現在、官報はネット上で無料公開されている。わざわざ定期購読するメリットはあるのか。

「定期購読者は、昭和22年以降の官報についてネット上の情報検索サービスをタダで利用できます。また、ネットの無料版は『告示』についてはタイトルだけで中身は見られない。厚労省関係でいえば、薬価や診療報酬の改定は告示となり、購読会員でないと内容が見られないんですよ」

 牧氏によれば、官報はコレクションの対象にもなり、貴重なものはネット上のオークションで取り引きされるとか。例えば日本国憲法発布時の「官報」はかなりの価値があるという。ならば、今回の号外もお宝に?

「分量が多くて金額が高いだけではお宝にはならないでしょう。私も自分の仕事とは関係ない内容なので、すぐに処分しました」

 環境負荷も過去最大級。

週刊新潮 2021年9月2日号掲載

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