活性酸素より危険な「脂質ラジカル」を抑える野菜スープ 効果的な野菜、豆類、きのこ類は?

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「酸化ストレス」

 活性酸素は細菌を殺したり、甲状腺ホルモンを作ったりするので悪いことばかりではないのだが、問題は体内の抗酸化酵素(SODなど)が少ないとすぐ過剰になってしまうことである。これが引き金となる病気は、がんを始め、高血圧、口内炎、シミ、白内障といったように、私たちが想像する以上にたくさんあることがわかっていて、今後も食事がより重要になっていくのを感じる。

「酸化ストレス」という言葉がある。ストレスや老化、病気などで活性酸素が大量に作られ、抗酸化酵素とのバランスが崩れた状態のことである。これはがんだけでなく、心筋梗塞、動脈硬化症、認知症、自閉症、うつ病などにもつながるといわれている。

 その一方で、農薬が抗酸化酵素を減少させるために、生殖細胞のDNAが活性酸素にやられて不妊の原因になっていることや、農薬で腸内細菌叢が変化して腸の免疫系がおかしくなって脳に炎症が起こることなどは拙著『本当は危ない国産食品』(新潮新書)でも示したが、農薬を使った野菜を食べることは、結果的に、野菜に含まれる抗酸化物質の効果を帳消しにしかねない。

 現代生活は活性酸素が増える一方だ。これを消去するには、野菜に含まれる抗酸化物質を取り込むことが最も効果的だが、そこにはできるだけ有機野菜を加えていただきたい。

 もっとも、有機野菜にこだわるあまり、それがストレスになれば逆に活性酸素の発生源にもなりかねないだろう。手に入らなければ、残留農薬が少ないといわれるブロッコリー、にんじん、大豆、大根、玉ねぎ、かぼちゃなどを使うようにすればどうだろうか。

 以前にくらべ、有機野菜は手に入りやすくなったといわれる。ネットでは簡単に注文できるし、都市近郊なら有機野菜を販売する小さな朝市のマルシェ(市場)もできている。ネットで近所の有機栽培農場、もしくはCSA(地域支援型農業)農場を調べて、そこで購入するのもいい。小規模の農家の支援も兼ねて直接購入すれば、自分が食べる野菜がどういうふうに作られているかもよくわかる。日本で流通している有機野菜はわずか0・4%(2017年度)にすぎないが、買う人が増えてくれば生産量も増えるはずだ。

 有機野菜は農薬や化学肥料を使って栽培した野菜より生産量が少ないので価格は割高だが、抗酸化物質の濃度が高く、農薬によるリスクがないことを思えば、差額は自分の未来への投資といえるのではないだろうか。

奥野修司(おくのしゅうじ)
ノンフィクション作家。1948年生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』など著作多数。

週刊新潮 2021年8月26日号掲載

特集「『活性酸素』より恐い猛毒『脂質ラジカル』も抑える がんを防ぐ『野菜スープ・ポタージュ』の作り方」より

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