新横綱「照ノ富士」が伝達式で「品格」と口にしたワケ 「白鵬とは違う」という矜持

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 来月の秋場所を楽しみに待つ好角家も多かろう。新横綱となった照ノ富士の実力は誰もが認めるところ。ケガの多さで短命に終わるとの懸念も囁かれるが、実は引退後のプランもしっかり描いているんだとか。

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「謹(つつし)んでお受け致します。不動心を心がけ、横綱の品格、力量の向上に努めます」

 第73代横綱への昇進が告げられた伝達式で、照ノ富士(29)は、ことあるごとに角界で物議を醸す「品格」の2文字を口にした。

 これには彼の来歴が強く影響していると話すのは、古参の後援会関係者。

「モンゴル出身の照ノ富士は、相撲留学のため17歳で来日したとされているけど、実はその1年前に日本の土を踏んだ。白鵬の実父の仲介で、宮城野部屋に入門できることになっていたが、成田に着いてから白鵬に連絡しても、迎えに来るどころか電話に一切出なかった」

 いったいどういうわけか。

「当時の白鵬は横綱になったばかりで忙しく、父親からの連絡が上手くいっていなかったのかもしれない。片や照ノ富士は空港にいても埒が明かないと、わざわざ部屋を訪ねたが門前払い。3日待っても音沙汰がなく、失意のまま帰国した」(同)

 時は巡り、この夏場所での白鵬の仕打ちである。勝つためのなりふり構わぬ相撲は品位を欠き、横綱審議委員会からも苦言が呈されたのはご存じのとおりだ。

「あの口上を聞き、照ノ富士の脳裏には母国の大先輩の姿があると思ったよ。自分は違うとね。彼は相撲で稼いだ金を親に仕送りするような男。気前のいい力士を、角界では“米ばなれがいい”と表現するが、彼は親孝行を欠かさない」(同)

 幕内優勝なら賞金を含め1回約2千万円が手に入るともいわれる。母国への送金は、自身の将来を見据えたものでもあると話すのは、別の後援会関係者だ。

「照ノ富士は帰化して日本国籍を取得後、親方になって後進を育てたいそうですが、故郷でビジネスもしたいと話していた。牧場経営を考え、モンゴルの両親は送金される度に牛を購入し、今や何百頭にまで増えたそうです。かの国では伝統的に羊肉が人気ですが、近年は牛肉の消費量が増えている。単価も高く、いいところに目をつけたと思うよ」

 朝稽古に勤しむ照ノ富士本人に確認すると、

「協会を通してください」

 と語るのみだが、相撲評論家の中澤潔氏はこう話す。

「一度は膝のケガで序二段まで落ちたが、諦めず最高位まで上り詰めた。その半面、両膝にはサポーターが欠かせず、伝達式でもきちんと正座ができない状態だったそうです。肉体的にも限界に近く、自分の相撲が取れなくなったら地位にしがみつかず、潔く引退する可能性は否定できません」

 故郷にもうひとつの“土俵”があれば、引き際を誤る横綱になることはあるまい。

週刊新潮 2021年8月12・19日号掲載

ワイド特集「ゴールデンスコア」より

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