河村市長と張本氏の謝罪はどこが間違っていたのか? 危機管理の専門家が指摘

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許されない謝罪の6類型

 失言や問題行動が批判されて、当事者や関係者が謝罪するというのはもはや毎週どこかで見られる光景である。その際の謝罪がきちんとしていれば騒動はある程度収まるが、ここで失敗するとさらに批判が強まるということになる。

 直近の「失敗例」として挙げられるのは、「金メダル噛み」及びその際の発言が問題となった河村たかし名古屋市長と、女子ボクシングへの侮蔑的な発言が問題になった張本勲氏だろう。

 危機管理コンサルタントの田中優介氏(株式会社リスク・ヘッジ代表取締役社長)は、著書『地雷を踏むな』の中で、「許されない謝罪」を以下の6つに分類している。

 (1)遅い謝罪=騒動から時間が経ってからの謝罪

 (2)時間足らずの謝罪=会見が短くて質問も受け付けないような謝罪

 (3)あいまいにボカした謝罪=「遺憾に存じます」「誤解を与えてしまい」「お騒がせしまして」「知らなかったとはいえ」「邁進します」といった言葉を用いた謝罪。己の非をボカしたまま謝罪しようとする意図が見え見え。

 ちなみにこの5つの言葉の頭の文字を並べると「イゴオシマイ」となる。

 (4)言い訳や反論まじりの謝罪=何らかの正当性を主張したもの。反省していない、と受け取られてしまう。

 (5)ウソと隠蔽まじりの謝罪=積極的なウソはもちろんダメだが、隠し事をしている場合も許されない。

 (6)贖罪のともなわない謝罪=実質的な痛みを当人が負わない。政界などでよくある「仕事を全うすることが責任です」という論理。

「投げやり」批判を浴びた河村市長

 河村市長、張本氏はどうだったか。

 まず河村市長。

 (1)については、問題化してすぐにコメントを出している。その点ではクリアしていると言えるだろう。

 (2)については、河村市長は何度も会見で取材に応じているのだが、この際、記者の挑発的な質問に感情的な対応をするなどして、さらにミソをつけている。

 象徴的なのは次のやり取りだろう。

 市長「誠に申し訳なかったということを繰り返して言うよりしょうがないでしょ」

 記者「しょうがないとは? 投げやりな態度?」

 市長「投げやりじゃないけど…」

(8月12日会見にて)

 謝罪の言葉を読む限り、ウソはついていないし、申し訳ないという旨も言っているのだが、本心からのものとはあまり受け止められていないようだ。それは(6)に関係しているのかもしれない。当初金メダルの交換費用を負担する意向を語っていたが、それ自体大した費用ではないので、世間から贖罪が伴っているとは思われにくいうえに、結局、それも負担しなくてよくなったため、余計にただ言葉を連ねているだけ、と受け止められる状況になってしまった。

 8月16日になって給料の返上も表明したが、批判が止まないからやった「後手後手感」は否めないところ。せっかくの贖罪も、人々の心には響かなかった。
 
 会見でご本人は「繰り返して言うよりしょうがない」と言っていたが、せめて「何度繰り返して言ってもお許しいただけないかもしれないが、何度でも申し訳ないと言いたい。何度でもバカと叱ってください」くらい言っていればまだよかったのかもしれない。

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