コロナに苦しむ中小企業が手を出す「2者間ファクタリング」 法外な金利で事件化も

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銀行も「これ以上は貸せない」

「今月、資金繰りが心配だなあ」「(銀行の)融資が間に合わないかもなあ」

 頭を抱える中小企業の社長。そこへナレーターが新サービスを紹介する。

「資金調達に困ったら、お手持ちの請求書、買い取ります!」

 四国銀行が新たに始めたサービス「ファクタリング」を紹介するテレビCMのワンシーンだ。ファクタリングサービスのOLTA(オルタ、東京都港区)との共同事業で、四国銀行は資金繰りにあえぐ中小企業をオルタに紹介。オルタは請求書や売掛債権を企業から買い取り、企業は買い取ってもらう額の2~9%を手数料として支払う。

 今、銀行とファクタリング会社の提携が増えている。オルタは20年2月に新生銀行との共同事業を開始して以後、群馬銀行、青森銀行、鳥取銀行など提携銀行が10行を超えた。

 青森県のみちのく銀行も今年1月、ファクタリング会社anew(アニュー、東京都千代田区)と業務提携を開始した。アニューはオルタと新生銀行が共同出資で立ち上げた企業で、5月には富山銀行も業務提携を結んだ。6月には三菱UFJ銀行もマネーフォワードとの共同出資でファクタリング会社を設立すると発表。新会社は来年春にもサービスを開始し、三菱UFJは資金繰りに苦しむ顧客を新会社に紹介していく方針だ。

 背景には、コロナ禍の予想外の長期化で、企業とりわけ地方の中小企業の資金繰りが厳しくなっていることがある。銀行は昨年来、中小企業向けに無担保無利子のコロナ融資を実行してきた。しかし断続的な緊急事態宣言で中小企業の売上高はいっこうに戻らず、追加融資を求める中小企業が相次いでいる。銀行は「これ以上は貸せない」と腰が引け、結果、ファクタリング会社と提携を結ぶことで自分たちの手には負えない顧客をファクタリング会社に繋げているのだ。

 だが、ある貸金業者の社長は、「ヤミ金まがいの偽装ファクタリング会社が増殖している中、銀行が安易にファクタリング会社に顧客を繋げるのは危ういのではないか」と首を傾げる。

自社の信用を毀損してしまう

 ファクタリングは古くからある合法的な資金調達手法だ。しかし、コロナ禍では、ファクタリングを装い、実質的には「高利貸し」をしている会社が増えている。「まっとうなファクタリング」と「偽装ファクタリング」の違いを説明しよう。

 例えば、A社は長年取引があるB社に100万円の商品を売った。互いに信頼関係があるため、B社は現金100万円をすぐに支払うのではなく、あとでまとめて払うという取り決めをしている。平たく言えば「ツケ」払いだ。B社がツケを払うまでの間、A社は100万円の売掛金(売掛債権)を持つことになる。

 ただ、コロナ禍でA社の資金繰りは悪化しており、数日後に迫る(別の取引の)支払い日までに現金80万円を準備しなければならない。そこでファクタリング会社に相談し、B社の100万円の売掛金を買い取ってもらうことにした。A社はファクタリング会社の取り分である2%の手数料(2万円)を差し引き、残り98万円を現金で受け取った。

 ポイントは、ファクタリング会社は通常、債権買取の事実を必ずB社に伝えるという点だ。「A社から、おたくの100万円の売掛金を買い取ったから、売掛金は(A社ではなく)こっちに払ってくださいね」と伝達するのがルールで、ファクタリング会社はみずから回収に動く。B社が100万円をファクタリング会社に払えば取引は完了する。

 上記が一般的なファクタリング取引で「3者間ファクタリング」と呼ばれる。ファクタリング会社もまっとうな企業が多い。だが、A社にとっては一つ難点がある。売掛金を売却した事実が必ずB社にも知られてしまうことだ。ファクタリング業者から通知を受けたB社の社長は、「A社の資金繰りはそんなに厳しいのか。経営は大丈夫だろうか。長年取引をしてきたけど、今後も続けていいのか」と取引の今後を心配するかもしれない。ファクタリング会社を利用することは、自社の信用を毀損することにも繋がるわけだ。

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