中国駐大阪総領事が所在不明のまま異例の交代 原因は利権がらみの金銭スキャンダルか

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日中間の闇

「結局、彼はアウトでした。クロと判断されたのでしょう」──。米中対立とコロナ禍の中、2021年7月は中国共産党結党100年、五輪東京大会開会という国際的に注目される行事が相次いだが、その背後で中国の不可解な人事も浮き彫りになった。(ジャーナリスト・吉村剛史)

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 昨秋、駐大阪中国総領事館(大阪市西区靱本町)の何振良[か・しんりょう]総領事は、大阪から中国に一時帰国したまま所在不明となり、中国当局による“身柄拘束”の可能性も指摘されていた。

 結局、任地大阪に復帰することなく官途を絶たれたようで、6月末に後任の総領事が来日、着任したのだ。

 何氏が総領事として勤務したのは約10カ月という異例の短さだった。所在不明になったことは今年4月26日、筆者がデイリー新潮誌上で、「中国駐大阪総領事館のトップが約半年不在 華僑社会でささやかれる“身柄拘束”説」として報じ、明るみに出た。

 大阪総領事館は、近畿、中国、四国など2府12県を管轄し、日本では東京の駐日大使館に次ぐ規模を誇る在外公館で、総領事も大使級だ。そのトップが突然姿を消し、総領事館から何の説明もないことに、関西華僑らが「何氏は権力闘争などに巻き込まれ身柄拘束されたのではないか」などと疑問の声が上がっていた。

総領事館も混乱

 何氏は1967年11月生まれの53歳。法学修士。東京の駐日大使館勤務をはじめ、北京の外交部(外務省)本省アジア局日本遺棄化学兵器問題処理弁公室の役職などを経て、2016年から19年まで駐福岡総領事を務め、20年2月、李天然[り・てんねん]氏の後任として駐大阪総領事に着任した。

 関係者の証言によると、何氏は1994年ごろには得意の日本語を活かし、NHK北京支局に“派遣”。「NHK北京支局長秘書」の肩書きで日中の報道現場でも活躍した。NHKによる江沢民単独インタビューのお膳立てに奔走したという。

 当時の何氏をよく知る日本人の報道関係者は「あのころNHKと中国当局はズブズブの関係で、何氏の尽力もあり、江沢民インタビューは4回ほど立て続けに実現しました。ただし、大した内容はありませんでしたが……」と語っている。

 筆者が今年4月、総領事館に電話で取材した際、担当者は「総領事は今も何で間違いありません。帰国理由は業務の都合。病気ではありません」と説明しつつも、「実のところ私どもにも、はっきりした事情は示されていないのです」と語っていた。

 ただし、現在の総領事館ホームページでは何氏の駐大阪総領事としての任期は2020年2月から12月と記載されている。2021年4月段階で「総領事は今も何」としていた担当者の説明は、結果的に誤りだったことになる。

 関西華僑のひとりはこう語る。

「何氏は経歴から王毅氏に近い一派とされますが、中でも注目すべきは外交部アジア局日本遺棄化学兵器問題処理弁公室で歴任した複数の役職です。

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