推しの「正名僕蔵」の凄さを語る 「井之脇海」「玉置玲央」…名バイプレイヤーが好き

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 胸糞悪さ(主に五輪組織委員会)と不安に加えて、この暑さ。唯一の逃げ場であるドラマも生煮え感というか。食えたもんじゃねえ。そんなことを担当編集Aに愚痴ったところ、「潮『推し』でまとめてみるというのも手です」と提案が。私もAも、貯金をつぎ込み、人生投げうつほど入れ込む対象はいないが、ドラマの話をしていると案外推しが一致する。ふた回りほど年の離れた我々だが、胸キュンポイントが同じだったりもする。ということで、我々だけが気持ちのいい原稿を書く。どうせここ2週間は五輪とコロナでドラマも潰れるし。世の中カオスだし。

 最も合致したのは正名僕蔵(まさなぼくぞう)が好きという点。今期ドラマでまだ姿を観ていないので、4月期で触れられなかった麗しい姿を絵にしてみた。「ソロ活女子のススメ」(テレ東)だ。主人公の江口のりこがありとあらゆるソロ活で心を潤すというドラマで、第1話のリムジンの運転手役が正名だった。

 Aと話したのは「正名が来るなら10万払ってもいい」。彼の素晴らしいところは日本全国各地のどこにでもいそうな「いるいる、こういう人感」だ。役所にもコンビニにも丸の内のいけすかないオフィス街にも平日昼下がりの公園にも、正名はいる。別名・一人総合商社。皮脂膜でくすんだ度の強い牛乳瓶底眼鏡も、スカした眼鏡も似合う。気配を消すことも、後味悪く爪痕を残すこともできる。私とAが惚れこむのは、その誰にでもなれる透明感だ。

 しまった! 既に半分も正名ってしまった。他に我々が合致したのは井之脇海(かい)、玉置玲央、毎熊(まいぐま)克哉。

 井之脇は今期「プロミス・シンデレラ」(TBS)で、ヒロイン・二階堂ふみに離婚を申し出る夫役。「他に幸せにしたい人ができた」だと。今後もっと出てくるはずだが、悪魔のような眞栄田郷敦(ごうどん)が小山田圭吾に見えてしまう欠点のあるこのドラマ、どうしたもんかのう。いじめられっ子役に「きれいのくに」で好演した青木柚(ゆず)も出ているし、ふみの魅力と実力をここまでお安い設定に落とした罪の深さを最後まで見届けなければ。

 玉置玲央はNHK朝ドラ「おかえりモネ」でテレビ局の社会部記者の役。どうやらハラスメント体質のようで今からふたりでワクワク。毎熊は次いつどこで出るか、首を長くして待っておる。

 私の個人的な推しは「彼女はキレイだった」(フジ系)の赤楚(あかそ)衛二。人懐っこい犬のような笑顔でヒロイン・小芝風花に好意を寄せる同僚役。その恋、成就しないだろうとわかっちゃいるが、噛ませ犬としての役目を果たしてくれるはず。

 既に名バイプレイヤー、ドラマで主演も果たしている岡山天音(あまね)は「緊急取調室」(テレ朝)の第3話に出演。元不良のボクサー役。どちらかといえば文科系内向属の役が多い岡山だが、こっちもイケてた。ま、キントリのゲストは基本「選ばれし腕の立つ役者」だもんね。

 他にも池田良、渋谷謙人(けんと)、前原滉(こう)など「推し」は数多いるが、全部書いたら1冊になるのでこのへんで。ちなみに、Aの一番の推しは村杉蝉之介。半分、同意。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2021年8月5日号掲載

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