熱海土石流、盛り土業者の社長が「自分は悪くない」 「逃げる金がない」と周囲に相談も

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「多いのかもしれないが…」

 この社長のもとで働いていた元役員が明かす。

「熱海の崩落現場には、コンクリートガラから木屑、プラスチックなど、あらゆる産業廃棄物が埋まっていました。実はそうしたゴミは、日金町の社員寮解体工事現場から運ばれたものなのです。その近くでトラックが埋まっているという話も聞きました」

 むろん違法行為であり、それらが今回、5万立方メートル以上の土石流となって街なかを襲ったというわけだ。続けて、

「数日前、知り合いのところに当の社長から電話がありました。『金を貸してほしい。逃げる金がない』と言っていたそうですが、その一方で、今回の土石流については『盛り土の届け出をしたのだから自分は悪くない』と開き直っていたというのです」

 そこで、雲隠れ中の社長をつかまえ質してみた。すると、

「私は逃げているわけでは決してありません。何か話すことでさらなる波紋を呼んでしまう。本当でないことを書かれるのは辛いのですが、それを否定すると今度は言い逃れにしか聞こえないので、弁護士から止められているのです」

 などと要領を得ない。代わりに、その動静を知る近しい友人に聞いたところ、

「本人は、今回の現場について『10年前に売った土地で、それ以来、全く現場に行っていない。現在の所有者はこれまで何をしてきたのか』『盛り土があると分かっていたはずで、その証拠もある』と、現所有者に疑問を呈しています。届け出を大幅に上回る盛り土が積まれていたことについては『確かに多いのかもしれないが、自分も現場に出向いても土の量はわからない。最初は請負業者にやらせていたのだが、その業者が途中で投げ出してしまった』と説明しています」

 まさしく“言い逃れ”“責任転嫁”である。その盛り土には種々の産廃が混じっており、この友人が言うには、

「社長いわく『産廃を入れろ、なんて指示するわけがない。もともと、あそこは産廃の宝庫だった。現場の奥にも産廃があったのを覚えている』と。挙げ句『熱海市が安直に許可を出していたということも問題』とも漏らしていました」

 そうした“市の姿勢”をもたらしたのは他ならぬ自身なのだが……。

 荒唐無稽な「言い草」を放置すれば、原因の究明が遅れるばかりである。一連の問題行為は時効かもしれないが、警察はいったい何をしているのか。

週刊新潮 2021年7月22日号掲載

特集「『殺人盛り土』業者の『言い草』」より

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