薄毛、抜け毛の対策をプロが伝授 「毛母細胞」を分裂させる食材、「デンキバリブラシ」の効果は?

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自然乾燥は禁物

 さて、日々のケアにおいて気になるのが入浴時の洗髪である。ひとくちにシャンプーと言っても成分や効能は千差万別、その選択を誤れば、かえって髪を傷めてしまいかねない。先の田路医師は、

「シャンプーは大きく三つに分けられます。まず、ラウリル硫酸ナトリウムなどを含み、洗浄力も刺激も強い『高級アルコール系』。次に脂肪酸ナトリウムなどを含む、高洗浄力で低刺激の『石鹸系』。そして『アミノ酸系』です。なかでも薄毛の人にお薦めなのは、肌や髪を形作るアミノ酸の一種であるラウロイルメチルアラニンナトリウムや、ココイルグルタミン酸ナトリウムなどを含むアミノ酸系のシャンプーです」

 シャンプーで大切なのは“汚れは残さず潤いは残す”だという。それが髪の成長を促し、ケアを怠ると薄毛や抜け毛を招いてしまう。

「高級アルコール系は刺激が強く、石鹸系は低刺激ながら皮脂を落とし過ぎてしまい、髪の毛がきしむことがあります。その点、アミノ酸系は肌と同じく弱酸性のため刺激が少なく、程よい洗浄力で汚れはしっかり落としつつ、必要な潤いは保つことができます。頭皮の弱っている薄毛の方でも安心して使って頂けるのです」(同)

 他方、前出の余慶氏は、

「普段使いのシャンプーは、ご自身の肌のタイプを考慮して選ぶのがよいと思います。汗かきで、頭皮も脂が多めという人は、高級アルコール系・石油系を選んでもよいと思います。ワックスなどのヘアスタイリング剤をお使いの方でも、しっかり落としたいからと、こちらを選ぶ方もいます。ただ、年齢を重ね、季節の変わり目などに一時的に敏感になるような“ゆらぎ肌”が出てきた方は、髪や頭皮も同じく潤い成分を失いつつあるので、洗浄力は落ちても保湿力があるアミノ酸系がよいでしょう」

 洗い方にも手順があるといい、

「シャンプーはできるだけ毎日1回、朝ではなく、頭皮の汚れが溜まった夜にしましょう。大事なのは、シャンプー前のブラッシングと予洗いです。まずはブラッシングで髪の毛のキューティクル(毛髪の外側にあるうろこ状の層)を揃えておきます。さっと濡らしてすぐシャンプーを始める人もいますが、その前に1~2分ほど、ぬるま湯で丁寧に予洗いし、髪と頭皮をすすいでおくと、汚れも効果的に落ちます。シャンプー後は、髪の毛になるべく摩擦をかけずにタオルで柔らかく押さえ水分を取る。包(くる)んでもよいと思います。自然乾燥は雑菌発生の原因にもなり、キューティクルが傷んでしまいます」(同)

 シャンプー以外のケアも。

「トリートメントとしては、コンディショナー(リンス)、ヘアトリートメント、ヘアマスクの3種類があります。髪の毛は、いわば『海苔巻き』のような構造で、外側を『海苔』のように覆っているのがキューティクル、その中の『酢飯』の部分はコルテックスと呼ばれ、その奥に『具』にあたるメデュラがあるという構造です。コンディショナーはあくまでキューティクルを整え、髪の流れをまとめてブラシの通りをよくするのが主な役割。対してヘアトリートメントはコルテックスまで浸透し、ヘアマスクはさらに奥まで入り込んでいきます」(同)

 いずれも髪を内側から補強し、ハリやコシを持たせる効果があるという。トリートメント後は、しっかり乾かす作業に移る。

「ドライヤーは10~20センチほど離し、乾きにくい髪の根元から風を当てるようにします」

 とは、先の浜中院長。

「頭皮や髪へのダメージを避けるため、同じ場所には2秒以上当てないようにします。女性は下から風を当てるとボリュームが出ます。8割ほどを温風で乾かしたら、残りの2割は冷風で乾かし切るとよいでしょう」

 この時、洗髪とセットで実践したいのが、

「睡眠前の入浴で血流が活発化したところでマッサージすると、睡眠時に分泌されるホルモンを頭皮に行き渡らせることができます。耳の前には頭皮に向かう血管が集まっています。両手を耳の前に添えて親指の腹を耳の上に置き、頭全体を包み込むようにつかんで持ち上げたり、掌でこめかみの上をぐるぐる回しながら押し上げるマッサージがよいと思います」(田路医師)

 あわせて、最近では田中みな実をはじめ芸能人の愛好家も多い美容器「デンキバリブラシ」もまた、有用だというのだ。

「毛穴側部にあり、収縮によって鳥肌などを生じる『立毛筋』に電気刺激を与えることで、毎秒千回振動させ、血流を改善します。朝晩10分ずつ、1日20分の使用が推奨されていますが、その直前に手指で頭皮をマッサージすると一層効果的でしょう」(同)

 前述の通り、血流の良し悪しは育毛に大いに影響するため、ぜひ実践を。さらには、ストレス起因の薄毛にも効果があるといい、

「自律神経は、身体の緊張時に活発化する交感神経と、リラックス時に活発化する副交感神経がシーソーのようにバランスをとって働いています。これを利用し、デンキバリブラシによる刺激で、あえて交感神経をオンにし、その後に副交感神経によるオフ状態を作り出すことでストレスを緩和させることもできます」(同)

鍛えるなら「大きい筋肉」

「睡眠」「食事」「ストレス」ときて“四つの対策”のうち残るは「運動」である。田路医師によれば、

「筋肉からも成長ホルモンは分泌されています。それが頭皮に到達して髪の毛は太く長くなるわけですが、実は筋肉への刺激はテストステロンの分泌も促すため、特に男性では薄毛を進行させる負の作用も懸念されています。それでも、代謝改善や臓器のアンチエイジング、ホルモンバランス向上などの効果が負の作用を上回って余りあるため、やはり運動は薄毛予防に効果的です」

 具体的には、どのようにすればよいのか。

「週に2~3回、準備運動をして筋トレ20分、有酸素運動20~30分、そしてクールダウンという流れがおすすめです。成長ホルモンは有酸素運動だけでは増えず、筋トレなどの無酸素運動で分泌されます。10~15回繰り返せる程度の負荷で、1分ほどの短いインターバルを保って筋トレを繰り返した時、最も成長ホルモンの分泌が増加するのです」(同)

 とはいえ、有酸素運動にも大きな意味があるという。

「有酸素運動は糖代謝を改善して脂肪燃焼を進め、代謝のよい体へと導いてくれます。脂肪燃焼は、血糖値がある程度下がらないと始まりません。筋トレで血中の糖をエネルギー源として使い、その後にジョギングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動をこなすことで、よりスムーズに脂肪燃焼に導くわけです。ストレス緩和を兼ねるのならばダンスやヨガ、ストレッチもよいでしょう。また、筋トレ時は筋肉組織そのものから成長ホルモンが分泌されるため、広背筋や腹筋、大腿四頭筋などの大きい筋肉を鍛えたほうが、より効果的だとされています」

 日々の少しの工夫で“寂しい頭”を遠ざけることができるのだ。

週刊新潮 2021年7月15日号掲載

特集「 日常生活で予防 これで『若見え』女と男の『薄毛・抜け毛』対策 第2回」より

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