難病患者が遠隔操作で接客する「分身ロボットカフェ」 日常会話も楽しめて女性に人気

ビジネス IT・科学

2021年07月12日

  • ブックマーク

 難病や障害のために外で働くことができない人が、自分の分身となるロボット「OriHime」(以下、オリヒメ)を遠隔操作し、店員として接客するユニークなカフェが6月21日オープンした。東京・日本橋の「分身ロボットカフェDAWN ver.β(ドーンバージョンベータ)」である。すでに7月下旬まで、席は予約で埋まっているという。

 ***

 オリヒメの存在は2年前、「れいわ新選組」所属で筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者である舩後靖彦議員が国会での使用を希望したことでクローズアップされた。

 高さ23センチ、幅は腕を畳んだ状態で約17センチ、奥行き約11センチ。重さ660グラムの小型ロボットである。内蔵カメラ、スピーカ、マイクが装備され、Wi-Fi環境があれば、ネットを介して遠隔操作することができる。会話だけでなく、賛成の手を上げたり、手を振ったり、拍手をしたり、うなずいたり、うーんと考え込んだり、なんでやねんのポーズもできる。

 そんなオリヒメが接客するのが、「分身ロボットカフェ」のウリである。店名の「DAWN」は絶望の夜を経た後の暁、「ver.β」は、現状に飽き足らず、常に失敗と改良を繰り返し、成長し続ける研究プロジェクトを意味するという。

オーストラリアのパイロット

 店内に入ると、身長120センチのロボットが出迎えてくれた。自走も可能なオリヒメ「オリヒメ-D」である。

「こんにちは!」

 女性の声だった。分身ロボットを遠隔操作する人を「パイロット」と呼ぶが、ALS以外の会話が可能なパイロットは、肉声で接客を行う。一方、会話ができないALSのパイロットは、視線を検知するセンサーが組み込まれた「オリヒメアイ」という装置を使う。パイロットの視線が文字を見ると入力され、人工音声に変換、会話をする仕組みだ。

 同行するカメラマン「オリヒメ-D」に「写真撮っていいですか?」と声をかけると、

「どうぞ!あまり、決め決めのポーズが取れず、すみません」

 と言って、近くに居た客を笑わせた。客は女性ばかりで、しきりにオリヒメを撮影していた。

 こちらの「オリヒメ-D」を操るパイロットは、米重ちふゆさんという。2013年に慢性疲労症候群を患った彼女は、以来、自宅での生活が続いている。

 オリヒメのパイロットになったことで、社会復帰への希望がつながったという彼女にどこから遠隔操作しているのか尋ねると、

「東京・足立区の自宅から操作しています。この店に登録しているパイロットは50人で、一番遠い場所に住むパイロットはオーストラリアにいます。子育てをされている日本人女性です。時差が1時間なので仕事が可能です。あとは九州や中国地方など、全国各地にパイロットがいます」

 カフェを運営するのは、11年にオリヒメを開発した吉藤健太朗氏が立ち上げた「オリィ研究所」だ。18年から、期間限定で分身ロボットカフェを4回開催していたが、このたび初の常設店舗を構えることになった。

次ページ:英語は、ちょっとだけなら

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]