ジャニーズWEST・重岡大毅、ゴールデンドラマ「#家族募集します」主演の実力と魅力
「人形さんになりたくないのはエゴ」
かっこつけないときもあるし、笑いをとりにいくときもある。そんな重岡もまた、アイドルのプロフェッショナルなのだ。
中島健人は「シゲはけっこう考え込む一面もある」(ポポロ2015年7月号)と知りながらも、テレビで大衆に向かっては「人間上がり下がりがあるはずなのにずっと太陽」(日本テレビ「行列のできる法律相談所」2021年6月20日放送)と、わかりやすく重岡のことをアピールする。
重岡は「人形さんになりたくないというのは自分のエゴ」(STORY2020年4月号)とも発言していて、アイドルとは何かを考え、求められるものを敏感に察知しながら、ときにかっこつけたり、つけなかったりを自分で調整しているように思える。
だが、それを単に「器用な人」とか「合わせるのがうまい」と形容するのは早計だろう。
重岡が作詞作曲を手掛けた「間違っちゃいない。」の歌詞にはこんなフレーズがある。
「光れない 馴染めない なぜ同じ様に生きれないの」
この歌詞の表現するものは、メンバーが言う「繊細」な重岡のイメージに重なる。
きっと、この要素が重岡の中にあるからこそ、昨年NHKで放送された「悲熊」のような、人間社会で器用に生きることができない熊という難役すら表現することができるのだろう。
この熊もまた、周囲との差を敏感に感じ悲しみながらも前向きに生きようとする熊だった。
ただメンバーの中には、重岡の大胆さに着目するものもいる。神山智洋は「結果的に間に合ってるからええけど、30分前に風呂に行くのはマジでビビる」(ポポロ2019年6月号)とライブ中の重岡の行動に言及している。他にも楽屋にパンツを投げ捨てたまま、などのメンバーからのタレコミエピソードは多い。
心は繊細だが行動はときに大胆――繊細さと大胆さという矛盾するものを持ち、苦心しながらも、調整し、進むことができる。
同じ「間違っちゃいない。」の中に「理想と現実で結ぶ靴ひも 歩けるかな」という歌詞があるが、理想と現実も、繊細さと大胆さも、かっこよさもかっこ悪さも、結んで歩けてしまうのが重岡という稀有な存在なのではないだろうか――。
「Jr.をもう一回やれって言われたら無理」
ちなみに、この作詞をするという行為自体が「波に乗れなくて始めた」(ザテレビジョン2021年5月7日号)ものだ。
2016年の映画「溺れるナイフ」での演技の評価が高かったのを機に、波に乗るものかと思いきや……本人も「これが繋がっていくのかなと思ったら、しばらく間が長かった」(STORY2020年4月号)と語る通りで、地上波ドラマ出演は2014年の「ごめんね青春!」から、2019年の「節約ロック」まで5年の間が空いた。だが、そこから、5クール連続出演が始まり、今に繋がっている。
ジャニーズJr.時代も「『先輩より前に出るにはどうすればいいのか』ってそればっかり」考えていたというほどで(ポポロ2015年7月号)、入所とともにいきなりセンターに抜擢されたタイプではない。「Jr.時代をもう一回やれって言われたら無理」(with2020年3月号)とも振り返る。
家に大きい鏡がないからといって黒いゴミ袋を雨戸一面にガムテープで貼り、鏡代わりにして練習していたという時代もあった。(ポポロ2017年12月号)
だからこそ「いま、どんなにダサくて、カッコ悪くても、未来の自分が絶対引き上げてくれる」という確信がある。(キネマ旬報2016年11月15日号)
ジャニーズWESTは昨年の「証拠」以降、3枚連続でシングル売上が20万枚を突破、中止にはなってしまったものの初の東京ドーム公演も計画されていた。そして、重岡自身もゴールデン・プライム帯ドラマ初主演と、ついに波に乗り始めたように思える。
ジャニーズWESTがデビューしたのは2014年だが、デビュー会見で重岡は「てっぺん獲ったるで!」と言っていた。
だが、時は経ち「テッペンって数や会場の大きさじゃないし、見えてたら面白くないと思う」(STORY2020年4月号)、「別にてっぺんが見えなくなってしまったっていうことやなくて、てっぺんは終わりがないものなんやってことに気づいた」(ポポロ2017年6月号)と、一箇所の頂上という意味に捉えず、てっぺんに広がりや奥行きを感じているようだ。
今やっと、重岡とジャニーズWESTは、“終わりのないてっぺんのはじまり”にたどり着いたのかもしれない。
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