二階堂ふみは“欧米型の女優”「プロミス・シンデレラ」でバツイチアラサー役に期待

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 二階堂ふみ(26)が主演するTBSの連続ドラマ「プロミス・シンデレラ」(毎週火曜、午後10時)が7月13日にスタートする。二階堂のドラマ出演はヒロイン・古山音に扮したNHK連続テレビ小説「エール」(昨年11月末終了)以来。今度の作風はラブコメで、演じる役柄も音とはかなり違う。演技派・二階堂の腕の見せどころだ。

 二階堂が「エール」で演じた古山音は、夫で作曲家の裕一(窪田正孝、32)を叱咤激励しながら、自分も歌手になる夢を追い続けた。気丈な賢夫人だった。

 一方、「プロミス・シンデレラ」で演じる桂木早梅はバツイチのアラサー。夫が「幸せにしたい女性が出来た」と身勝手なことを言いだし、一方的に離婚を通告され、無一文、無職、宿無しになる。

 やむなく公園で野宿生活を始めたところ、家が金持ちの高校生・壱成(眞栄田郷敦、21)と知り合う。壱成は意地が悪く、金に困っている早梅に対し、ミッションをクリアすれば賞金を出すと言う。

 まずは「セレブパーティーで主役に恥をかかせたら20万円」というミッションが与えられた。リアル人生ゲームの始まりだった。

 早梅は曲がったことが大嫌いで真っ直ぐな性格だ。そこは音と重なる部分があるが、境遇はかなりトホホ。ダンボールハウスで寝起きするシーンもあるから、「エール」の時とはかなり違った二階堂が見られる。

 このドラマの役づくりについて二階堂は、早梅が自分と1歳しか違わない27歳という設定であるため、「これからの人生をどう生きていくのかという悩みや葛藤など、等身大で演じることができればと思います」(※1)と語っている。

 等身大で演じる――。本当だろうか? この人ほど作品によって異なる顔を見せる役者も珍しく、自分の素に近い演技をするタイプの役者とは思いづらい。

 フジテレビ「ストロベリーナイト・サーガ」(2019年)で演じた刑事・姫川玲子は心身ともにタフだった。TBS「この世界の片隅に」(2018年)で演じた遊女・白木リンは美しく妖しかったが、一方で深い悲しみを漂わせていた。映画「翔んで埼玉」(2019年)では埼玉県民を徹底的に罵る貴公子然とした金髪の男子高校生に扮した。

オンオフを分ける“欧米人型”

 一体、どういう役者なのだろう。二階堂や満島ひかり(35)ら数々の役者を育てた名伯楽として知られる映画監督・園子温氏(59)はかつて筆者の取材にこう答えている。

「(2012年公開の映画「ヒミズ」のヒロイン役オーディションで初めて会ったが)日本人型ではなく、欧米人型の気質だと思いました。思ったことをズケズケと言う。圧倒的な迫力も感じた。また目標を決め、それに向けて自分に課す設定をつくっている。目標を達成するために努力も積んでいる。『この子は女優として成功する』と確信した」(園氏)

 満島の場合、自分が見つけないと、埋もれてしまうのではないかという思いもあったという。一方、二階堂はたとえ自分が起用しなくても間違いなく浮上してくる役者だと感じたそうだ。

 この映画によって二階堂はヴェネツィア国際映画祭で最優秀新人賞を獲得する。快挙だった。もっとも園氏によると「二階堂は新人賞などホップ・ステップ・ジャンプのホップに過ぎないと思っている」。確かに二階堂本人や所属事務所がヴェネツィアでの賞を金看板にしたことはない。

 園氏は「地獄でなぜ悪い」(2013年)でも二階堂を起用した。片や二階堂は2016年に放送されたEテレ「ミュージックポートレイト」で園監督について「自分を変えてくれた人」と語っている。

 園氏は筆者の取材にこうも話していた。

「二階堂は並みの女優じゃないから、連続ドラマの主演を勝ち取ったくらいで浮かれるタイプではない。逆に面白い役柄なら、どんなに小さな役でも受けるだろう」

 目標を設定し努力するところも含め、役者としてのプロ意識や向上心が強いのだ。なので勉強もしている。

「ちょっと話すだけで分かるが、ほかの同年代の女優と比べて、圧倒的に映画を観ている。メジャーな作品ばかりでなく、小さな映画館でしか公開されていない作品まで貪欲に観ている。もちろん読書もしている。たぶん、自分が知識不足であることが許せない人なのだろう」(園氏)

 役柄にのめり込んで撮影に臨む憑依型の役者ではない。それは本人がインタビューで何度か否定している。憑依していないから、撮影現場を離れた途端、普段の自分に戻るという。

 それでも求められた役柄になれるのだから、高い演技力を持つのだろう。やはり欧米人型の役者だ。欧米の役者はオンとオフをきっちりと分ける。

 園監督は2011年に二階堂と初めて会った時点で、その頭の良さに驚かされたという。おまけに勉強好きなのだから、2014年に難関の慶應義塾大総合政策学部に進学したのもうなずける。

 ただし、学校も所属事務所も在学状況を明かさないものの、もう8年生になる。昨年は「エール」の撮影があったため、休学したと見られている。今後も大学側が許す限り、マイペースで学業と向かい合うのだろう。4年での卒業に拘らず、自分の都合で大学に通うところも欧米人型と言えそうだ。

 半面、欧米人型だからといって、ドライというわけではない。たとえば肉親愛は強い。「エール」に出演を望んだ動機の1つも祖母のことが頭にあったからとされている。

 二階堂は沖縄出身。祖母は12万人以上が犠牲になってしまった1945年の沖縄戦の中で必死に生き抜いた。「エール」のテーマの1つは戦争。二階堂には祖母が辛酸を舐めた戦争に触れたいという思いがあったと言われている。

 だから、公募だった音役を演じるため、オーディションを受けた。由緒ある国際映画祭で最優秀新人賞を得ていながらオーディションに臨む役者などまずいない。園氏が「逆に面白い役柄なら、どんなに小さな役でも受けるだろう」と言っていたのも納得である。

 昨年の大みそかのNHK「第71回紅白歌合戦」では紅組司会を務めた。大トリだったMISIA(42)がコロナ禍をふまえた上で「音楽は人と人を結び付ける」と語り、「アイノカタチ」を歌うと、大粒の涙を流した。クールヘッド、ホットハートの人にほかならない。

 新ドラマ「プロミス・シンデレラ」の原作は同名のウェブ配信漫画。今年5月時点で累計発行部数が200万部を超えた人気作だ。昨年7月期の大ヒットドラマ「私の家政夫ナギサさん」も電子書籍配信サイトの漫画だった。連ドラの原作の本流は小説から漫画に移行したが、今度はウェブ漫画になりつつある。

 欧米型女優・二階堂の新ドラマも大ヒットとなるか。

※1番組公式ホームページ

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月6日掲載

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