シングルマザー、LGBTQ+、臨床心理士の僧侶もいる 相談急増中「オンライン僧侶クリニック」って何?

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相談では解決できないことも

 尾田さんが尼僧ということもあってか、相談者は40~50代の女性が多く、内容の大半は子育て、介護、夫婦関係など実生活に即したものだという。

「私が様々な経験をしているので、相談者の人と同じ目線に立ち、仏教的観点から少しでも人生を楽に生きることができるようになる方法を教えてあげる、肩の荷をポンと下ろしてあげることができればいいなと思っています。

 ただ、やはり私への相談だけでは解決できない問題もあります。貧困の問題の場合、私は相談者が何に困っているのか、細かいところにも気が付くことはできますが、低所得者への給付金や支援金は、結局、行政に助けてもらうしかありません。相談は全国から来るので、各自治体の状況がわからなかったり、お役所の人に過度に問い詰めるような言い方をされて不信感を持っている相談者の方もいたりして、歯がゆい思いをすることもあります。また夫婦間のDVといった深刻なケースは、私に話すよりも、弁護士さんに相談するべきですよ、と伝えることもあります」

忘れてくれてもかまわない

 それでも尾田さんは、「悩みに悩んでいる人は、“今”聞いてほしい、“今”何とかしてほしいと思っているのだから、誰でも僧侶クリニックを利用してほしい」と話す。

「特に思春期の子どもたちに利用してほしいです。親に言えない、親の耳に入れたくない悩みを私も持っていました。でも、もし学校や友達に話したら、それが親に伝わってしまうかもしれないという恐怖もあって、誰にも相談することができませんでした。行政の福祉課や福祉施設などはハードルが高いような気がすることもあるでしょう。そんなときに、思い出して相談できる人は必要ではないかと思っています。悩み事を話して気が楽になってくれたら、私のことを忘れてくれてもかまいません」

 運営側も、こうしたお坊さんの意見を聞いて、サイトを少しずつ改善しているという。先の田代さんが言う。

「サイトへのアクセスは多いのに、そこから一歩踏み込んで、相談するところまでいかない人がいることを考えると、我々の方にまだまだ改善すべき点があるのかもしれません。尾田さんが『今、話を聞いてほしいという人がいる』とお話されていましたが、すぐにでも相談したいという方のために、予約なしで相談できるようにしようとか、オンラインで顔を合わせて話すのもハードルが高いと感じる方のために、メールやチャットを使えるようにしようとか……そうしたことが必要なのかも」

「僧侶クリニック」としてリニューアルした4月以降、すでに200名弱が利用している。うち、女性の利用は64%で、20%がリピーターだ。現在も多種多様なお坊さんが参加しているが、9月には50名のお坊さんが揃う予定だ。

デイリー新潮取材班

2021年7月2日掲載

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