収納ケース大手「天馬」のお家騒動「第二幕」 最後に笑うのは米ハゲタカファンド

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“金田派”と“司派”

 衣装ケース「Fits」などで知られる東証1部上場の「天馬」では、創業者一族による内紛が収まらない。一昨年の「ベトナム贈収賄事件」で一族に亀裂が入った経緯は「週刊新潮」2020年7月9日号の「MONEY」欄でも報じたが、いま、その争いの第二幕が注目されている。

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 骨肉の争いを演じてきたのは、4兄弟のうち、経営の一線から退いた長男家と三男家を除く、次男家と四男家である。天馬トップの座には最初に長男が就き、次男、四男と続いた。そのうち存命なのは、20年4月まで名誉会長を務めた四男の司治(つかさおさむ)氏だ。

 贈収賄事件の処理を進めるなかで、次男の息子である金田保一前会長が司氏の名誉会長職を剥奪するなど、次男家“金田派”と四男家の“司派”は真っ向から対立。そして昨年6月の株主総会を経て、経営陣は金田派で占められたのだが――。

 今年6月29日の株主総会を控え、次男家が先手を打った。3月、長男家の資産管理会社を買収し、次男家掌握の天馬株は29.93%に上昇。対する四男家の持ち分は、資産管理会社の8.36%と司氏個人分を合わせて12.56%である。

漁夫の利

 M&Aアナリストによると、

「次男家が長男家の株を引き受けるまで、天馬の筆頭株主は14.95%を持つ米投資ファンド“ダルトン・インベストメンツ”でした。そのダルトンは昨年の株主総会で次男家主導の会社提案に賛成し、取締役にグループ会社のトップを送り込んでいることから、次男家とは密接な関係にあります」

 次男家とダルトンを足せば、その持ち分は3分の1を優に超える44.88%。株式の33%超を取得する場合にTOB(株式の公開買い付け)の実施を義務づけている金商法の「3分の1ルール」に抵触する可能性もゼロではないという。

 ほかにも、四男家と共同戦線を張るかのような会社の「監査等委員会」などの不確定要素もあるが、現状では数の論理で次男家が有利。次男家が株主総会を制したあかつきには、

「MBO(経営陣による自社買収)に踏み切るに違いありません。四男家の株式を強制的に召し上げ、金田前会長の息子、金田宏常務執行役員が天馬のオーナーに君臨するシナリオです」

 このシナリオが実現すると、ダルトンが数十億円という巨額の差益を手にする展開もありうる。お家騒動の第二幕は、ハゲタカが漁夫の利を得て閉幕となるか。

「週刊新潮」2021年6月24日号「MONEY」欄の有料版では、株主総会を控えた創業者一族を取り巻く状況を詳報する。

週刊新潮 2021年6月24日号掲載

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