コロナ新治療薬「ソトロビマブ」は死亡率を85%低減 発症リスク抑制の「抗体カクテル療法」にも期待

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経口薬がほしい

 また、寺嶋教授は軽症者に投与する薬について、

「早い段階で簡単に使用できるように、経口薬がいい。現状、入院しないと治療に取りかかれず、施設療養や自宅療養時に、重症化しないようにとじっと待つのは、患者さんには心細い」

 と語る。中外製薬のAT-527の開発が順調に進むことを念じないではいられない。寺嶋教授が続ける。

「変異株の観点からも治療薬は大事。ワクチンはいまのところよい効果が出ていますが、ウイルスが変異すると効果が影響を受ける可能性があります。一方、治療薬は比較的、変異の影響を受けにくい。ウイルスが細胞に侵入する際にくっつく突起、すなわちSタンパクの変異は、ワクチンの効果に影響することがありますが、逆にSタンパクをターゲットにした治療薬でなければ、その変異が起きても同様の効果が得られます。それに新型コロナの各段階に効く薬があれば、さまざまに組み合わせられる。それができるのも治療薬の強みなので、ワクチンだけに頼るのではなく、治療薬との両輪作戦が必要です」

 やはり多くのコロナ患者を治療してきた、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師も言う。

「一番多い患者さんは、肺炎になりかかりくらいの人で、そういう人が肺炎にならないようにしたい。そのためにもウイルスが増殖する前に、できれば経口で投与でき、ウイルスの増殖を抑える薬がほしいです。インフルエンザには、ウイルスの増殖を抑える薬としてタミフルがありますが、そういう薬が新型コロナに対してもできてほしい。今回の厚労省の補助金は、そうした薬を開発する助けになるでしょう」

 そして、こう加える。

「多くの人が新型コロナを怖がっていますが、タミフルのような薬が出てきてインフルエンザと近いと思えれば、普通の生活に戻りやすいと思います」

 しかし、実は、すでに日本には、効果が期待できる軽症者向けの経口薬がある。本誌(「週刊新潮」)で何度か取り上げたイベルメクチンである。兵庫県尼崎市にある長尾クリニックの長尾和宏院長は、

「中等度II、すなわち酸素飽和度が93%以下の患者さんに、在宅酸素およびステロイドとともに“三種の神器”と称して処方しています。自宅療養中の症状の悪化を防ぐために、自宅療養が始まる時点でイベルメクチンを渡し、私が指示したタイミングで飲むように伝えます。1日1回、3~4錠を飲むだけなので、日付の感覚が失われている一人暮らしの認知症患者にも適しています」

 と話す。ただしコロナ用には認可されていないので、長尾院長は自身で責任を負い、患者から口頭でインフォームド・コンセントを得て使用しているという。

 厚労省の支援を得て治療薬の開発が順調に進み、一日も早く認可されることを強く望みたい。同時に、イベルメクチンのような日本発の既存薬の有効活用を希望せずにはいられない。

週刊新潮 2021年6月24日号掲載

特集「スポットライトの『尾身会長』には不都合な真実」より

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