事件現場清掃人は見た 孤独死した70代男性の“遺品ノート”を見て分かった意外な素性

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きれいな絵

「レシピを見て、間違いなく一流のシェフだと思いました。1つの料理につき見開き2ページを使って書かれてありましたが、お皿に盛りつけられた料理を色鉛筆を使ってデッサンもしていました。プロのイラストレーターが描いたような、本当にきれいな絵でした」

 レシピの種類も豊富だった。

「スープ、サラダから始まって、前菜、魚料理、肉料理、デザートと、フレンチのフルコースのレシピがびっしり書き込まれてありました。フランスで長く修行していたことが伺えます」

 レシピを見終わって、高江洲氏は思わずため息がでたという。

「亡くなった男性は、有名フランス料理店のシェフだったのかもしれません。なのに最後は、狭いシェアハウスで孤独死したのですから、人生は残酷というか、何が起こるか分からないと思いましたね」

 遺品は、小さなダンボール箱1つにすべて収まったという。

「70年以上生きてきて、遺品は、たったこれだけとは……。これまで引っ越しを繰り返すたびに、余計な荷物を処分していったのでしょうか。そして最後まで大事にしていたのが、フレンチのレシピだったわけです。男性にとって、このレシピが人生の全てだったのかもしれません」

 高江洲氏は、レシピの入ったダンボール箱を管理会社の担当者に渡し、そんなことを考えながらシェアハウスを後にした。

デイリー新潮取材班

2021年6月22日掲載

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