鉄道好きが愛す「地下鉄」 トンネルの真上には何が? 急カーブの意味は? 平坦区間がないのは?

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車庫は地下で相互直通運転がない場合

 なかには、車庫も地下に設けられ、地上の鉄道と相互直通運転を行っていない地下鉄もある。全国2番目の地下鉄として1933(昭和8)年5月20日に開業した現在のOsaka Metroの御堂筋線だ。1933年の時点で御堂筋線は梅田駅と心斎橋駅との間の3.2kmを結んでいて、駅と駅との間や駅はもちろん、梅田駅構内や心斎橋駅構内とに設けられた車庫も皆地下にあった。

 電車を入れる方法として考えられたのは、トンネルの真上に開口部を設けるという方策であった。開口部は本町(ほんまち)駅付近のトンネルに設置され、電車をトンネルに入れる際には開口部からクレーンで降ろしたのである。

 当時、本町駅付近の開口部まで電車を運んだのはトラクターであったり牛であったりと、大変牧歌的であった。このころ既にトレーラーはあったという。それでもこのような方法を採用したのは、当時の日本が不景気に見舞われていて、国の要請で地下鉄の建設工事に失業者を多数雇い入れたからである。便利な機械や車両を使ってしまうと人手が余ってしまう。そこで、効率の悪いやり方を採用してまで電車をトンネルまで輸送したのだ。

 ちなみに、今日の御堂筋線は江坂駅と中百舌鳥(なかもず)駅との間の24.5kmを結んでいて、江坂駅と中津駅との間は地上に線路が敷かれている。御堂筋線用の電車は地上のこの区間から入れているかというとそうではない。ならば、御堂筋線と相互直通運転を実施している北大阪急行電鉄南北線経由かというと、それも違うという。

 何でも、同じOsaka Metroの四つ橋線の車両基地で、地上に設けられた緑木(みどりぎ)車両工場から御堂筋線用の電車は入れられているそうだ。緑木車両工場は北加賀屋駅の近くにあり、クレーンで線路に据え付けられた電車は四つ橋線を大国町(だいこくちょう)駅まで走り、ここで線路が結ばれている御堂筋線へと進んで搬入は完了となる。

梅原淳
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現在の三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月18日掲載

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