元徴用工裁判で大法院判決を否定した判事に降りかかる 「史上最悪の判決」の汚名と総バッシング

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「漢江の奇跡が何故判決内容に出て来るのか」

 メディア報道も判決への総批判で固まっている。

<YTN/ニュースのある夕方>では、「韓日(日韓)請求権協定は植民地支配を受けた韓国という国家に対する合意であり、個人が持っている損害補償に対しての言及は一言もなかった。そのため、今回の判決は納得できるものでない」と指摘したヤン・ジヨル弁護士に対して、キャスターは「学校の歴史教育を見直した方が良い」と応じている。

 さらに<MBC/イシュー完全征服>では、キム・ソンフン弁護士が登場し、「反人権的な動員に対する訴訟であるのに、このような判決を下すのは本当に異例だ」と口を極めて非難し、<聯合ニュース/イシューキューブ>では、チェ・ジンボン聖公会大学新聞放送学科教授が、「判事が政治家なのか」、「漢江の奇跡が何故判決内容に出て来るのか」、「原告らが受けた被害を考えれば、こんな判決を下すことはできないはずだ」と痛烈に批判していた。

 原告側の請求が却下されてからというもの、韓国内では金亮澔判事のあら捜しが始まっており、中央日報の2017年1月19日付の「ムカッと判決…懲役1年の判決に悪口を言い放ち、直ぐさま懲役3年で殴り返した判事」というタイトル記事が引用報道されている。

 これは、判事の判決を不満に思った被告人が判事に悪口を言い放った直後、刑罰を3倍にしたという内容だ。裁判官はその資質を常に問われるべきだが、記事内容が事実であったとしても、4年も前のまったく別の裁判の話である。それをあげつらって今回の判決を不当だと結論づけるのはナンセンスと言う他ない。

司法の混乱をもたらした張本人は?

 最後に触れておかなければならないのは、このような司法の混乱をもたらした張本人が文在寅大統領だという点である。彼は自身の支持率確保のために就任直後から反日的言動を繰り返し、2015年の慰安婦問題合意も一方的に破棄した結果、日韓関係や米韓関係が悪化。その他の要因が絡み支持率が急降下したことから、今年に入って大統領は“反日融和”へ急旋回し、その目的のために今回のような「日本に有利な判決」への流れを作り出していった。司法利用を臆面もなく展開していると言えよう。

 その意味では、目的のために手段を選ばない文大統領のために金亮澔判事はスケープゴートになったようなものだ。文大統領が主導した反日政策の原点と言えるのが2018年の大法院判決である。対日融和へ向かうにはその原点を正さなければならず、その先兵として駆り出されたのが2月に現ポストに異動したばかりの金判事だったとも言えるだろう。

 加えて大統領府は今回の逆転判決が世間の猛反発を浴びることを十分想定し、先述の触れられたくない過去を持つ金判事を矢面に立たせたというのは、うがった見方だろうか。

 当の金判事は判決文の中で「被害者たちが勝訴すれば、文明国としての威信は地に落ちる」とまで言及していた。判決に批判を加える面々は、その声を冷静に聞くべき時ではないだろうか。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月15日掲載

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