元徴用工裁判で大法院判決を否定した判事に降りかかる 「史上最悪の判決」の汚名と総バッシング

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わずか3日で28万人が弾劾を希望

 今月8日、韓国の強制徴用被害にあったと主張する人々とその遺族ら85人が起こした訴訟について、ソウル中央地裁はこれを却下した。この、いわゆる元徴用工訴訟をめぐっては韓国大法院(最高裁)で2018年、三菱重工業と新日鉄住金(現:日本製鉄)に対し原告側へ金銭の支払いを命じる判決が確定していた。今回はそれと真逆の判断となったわけだが、この判決を下した判事には国を挙げてのバッシングが始まっている。

 差し当たって韓国では、「日本に有利な判決が下された」として世間の一大関心事となっている。大統領府のホームページに常時置かれる国民請願掲示板に、「反国家、反民族的判決を下した金亮澔(キム・ヤンホ)判事の弾劾を要求します」という請願文が掲載され、わずか3日で28万人(10日23時時点)を超える賛同数に達している。掲載後30日以内に賛同数が20万人以上となった場合、政府や大統領府関係者より何らかの回答がされることになっているから、この嘆願もすでに回答の対象となった。

 掲示板には、金亮澔判事に対し「反国家的で反歴史的判決を下した彼は、本当に大韓民国の国民なのか」という内容が連綿と綴られていた。判決と対照する形で展開された請願文の主張を紹介してみよう。

三権分立に違反とまで

<主張1>

判 決:韓日(日韓)協定によって個人請求権が消滅や放棄されたわけではないが、訴訟でこれを行使することは制限される。被害者の損害賠償請求権は、請求権協定の適用対象に含まれる。

請願人:金判事の述べた主張は、日本の自民党政権が賠償責任を負わないために掲げた言い訳である。判事が根拠として述べた請求権消滅論は、日本の保守の立場をそのまま反映した反民族的な判決である。

・協定締結当時、否認されたのは“国家対国家の賠償権”であり、個人が日本政府及び日本企業を相手として請求する“個人請求権”は否認されていない。

・1991年、日本外務省の報告書は韓国人の個人請求権は有効だと認めている。

・2007年、日本の最高裁判所も個人請求権の履行を正当と判示したことがある。

<主張2>

判 決:国際社会が日本の植民地支配(日韓併合)を不法と見ていない。

請願人:臨時政府の法体系を継承する大韓民国の憲法に真っ向から対立する反国家的行為だ。

<主張3>

判 決:韓日(日韓)関係が悪化すれば、米国との関係も悪化する可能性がある。

請願人:判決は判事としての良心と国内の法学界の先例、条文をもとにしたのではなく、個人の政治的動機によるものだ。これは三権分立に違反しており、良心による裁判権の独立を規定した憲法にも反する。

 この他にも、金亮澔判事が1965年の日韓請求権・経済協力協定による日本の経済支援について「『漢江の奇跡』と評価される世界の経済史に残る目覚ましい経済成長に寄与した」と言及していることも波紋を広げている。

 ここからは、請願人が記述した内容の検証に移りたい。

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