市川海老蔵「KABUKU」の中国人差別問題 歌舞伎界から擁護の声が出ないワケ

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幼稚な人種ギャグ

「率直に言って、演劇ジャーナリズムも関係者も観客も、ほとんどの人が『実盛物語』に注目していました。観客も勸玄くん目当てが大多数で、チケットは売り切れになりました。実際の『KABUKU』を見た批評家やライターさんは少なかったと思います。もし話題作なら、舞台稽古を公開したりして問題点が早期に浮かびあがったかもしれません。ところが“ノーマーク”のまま本番当日を迎えてしまったのです」

「KABUKU」の冒頭は渋谷のセンター街だったため、驚いた観客も少なくなかっただろう。江戸末期に民衆の間で流行した「ええじゃないか」をテーマに設定しているのだが、江戸時代の京都と現在の渋谷が重なり合うという展開だったようだ。

 観劇を終えた観客の一部が立腹し、SNSに投稿を始めた。それも最初は「差別」ではなく、「あまりにもひどい」という批判が多かったようだ。

「Twitterで批判の詳細を見てみると、しっかりと《テンガロンハットの白人とヒジャブのムスリム女性と公家姿の日本人がチャイナハットの中国人を責め立てる》と具体的にツイートされていました」(同・歌舞伎関係者)

誰の意見を訊いた?

 セリフもツイートで引用された。日本人たちが《お前達が衛生面に気をつけずになんでも食べるせいでコロナになった!》、《爆買いでコロナを広めた!》と非難すると、中国人が《金をばら撒いてやったんだから感謝しろ!》と逆ギレするというものだ。

「ツイートした人は『何が面白いのかさっぱりだった』と感想を述べました。そういう感想を持った歌舞伎界の関係者も少なくなかったのです。歌舞伎の古典を“差別的”と批判されたなら関係者は反論して擁護したでしょう。しかし『KABUKU』は新作ですので、現代の規準を適用すべきだと思います」(同・関係者)

 テンガロンハットとかヒジャブといった具体的なアイテムを使い、安易に“人種”を表現したのも問題だという。

「こうなると中国人だけでなく、アメリカ人やイスラム圏の人々の描写も差別的だった可能性があったと思います。あまりにも脇の甘い演出と言わざるを得ず、これは批判されても仕方ないでしょう」(同・関係者)

 ツイートが広まっていくにつれ、「面白くなかった」という感想より、「差別があった」という俗耳に入りやすい問題点だけが拡散していったようだ。

 一体、誰がこんな差別表現を許したのか。朝日新聞は《海老蔵さんが音声SNS「クラブハウス」で参加者の意見などを採り入れた新作》と紹介した。

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