ペットロスを癒す「クローンワンコ」 本物と瓜二つに作る驚きの技術、そして値段は?

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鼻の穴の中側と外側も採寸

 クローンワンコの製作料金は、大きさによって値段が変わるものの、最低1体300万円。製作する際には通常、愛犬の細かなサイズのほか、写真や動画などの情報も用いる。愛犬がすでに亡くなっている場合も、大まかなサイズや写真などから判断し、製作は可能だ。高橋氏は、こう説明する。

「よりリアルに再現するための資料として、写真をたくさん提供していただいています。飼い主さんがワンちゃんを抱いている写真があれば、飼い主さんの手の大きさとの比率からワンちゃんの部分的な大きさを割り出したりできますし、動画も資料としてあればあるだけ再現度が上がります。実際の採寸だけで作ると実物と印象が違ったりすることもあるので、動画からイメージをつかんだりするんです。

“本物”を採寸できる場合は、オーダー時にありとあらゆる箇所を測定します。細かいところでは、鼻の幅とか高さとか、鼻の穴の中側と外側の幅とか。でも、採寸したサイズのまま作っても、飼い主がリアルと思える姿を再現できず、見た目の印象が違ってしまったりすることもあります。また、体毛の分を差し引いて体の原型を作らないといけないのも、製作過程では一番難しいところです。

 使用する素材は、体毛、皮膚、眼球など、パーツごとに精査し、皮膚には独自に配合したシリコンを使用します。ハリウッド映画の特殊造形物にも使用されている体毛は、長年のパートナーである米国の体毛専門スタジオへ依頼しています。触り心地も本物に近づけるために、スタイリング剤としてオイルを足すこともあります。体毛は各パーツの生え方の特徴に沿って、顔・耳・手足などの細部は1本ずつ手で植毛しています。体毛に隠れた普段は見えない皮膚の色味にも気が抜けません」

1体最低300万円でも利益はわずか

 製作はチームで行い、6名ほどのスタッフが携わる。作業工程が驚くほど多く、工程が変わるごとに製作スタッフも変わる。当然のことながら原材料も高価で、製作原価も高い。1体最低300万円という価格でも、利益はわずかなものだという。

「会社としては、コマーシャルのキャラクター造形の仕事を一本受注する方が利益は大きいです。クローンワンコは、採算度外視に近いんです」(岡部氏)

 クローンワンコの製作は2019年から始めた事業だが、受注はこれまで5体にとどまっている。たくさん注文を頂いたとしても、キャパシティーに限りがあるので、「これがちょうどいいペース」だと話す。そこまでして、なぜ事業を続けるのか。

「ペットロスで辛い思いをしている人たちの問い合わせを受けて、その悲しさを軽減したいという思いから始めました。ぼくもペットロス経験者で、以前飼っていた犬が死んだ時は、ひと月半くらい何も手につきませんでしたから。親には申し訳ないんですけど、母親と父親が死んだ時より泣きましたから。ペットロスの辛さは身を持って知っているんですよ。だから、ペットが亡くなってしまった心の穴をどう埋めればいいのと嘆く人たちのつらさを、少しでも緩和できればいいなと思っています」

 岡部氏は現在も2頭の犬を飼っている。クローンワンコのパンフレットでモデル犬をしているトイプードルは、岡部氏の愛犬だ。

「それと、こんな造形技術とノウハウのある会社が存在することを、多くの人に知ってほしい。クローンワンコには、ブラストの特殊造形技術を世の中に知らしめるツールとしての役割も担ってもらっているんですよ」(同)

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