ペットロスを癒す「クローンワンコ」 本物と瓜二つに作る驚きの技術、そして値段は?

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 コロナ禍でペット需要が急増しているという。しかし、ペットをかわいがればかわいがるほど、ペットロスで辛い思いをするものだ。

 筆者も昨年、13年飼っていたコーギーを亡くした。愛犬がお気に入りだった場所を見ると、半年以上経った今でも、生前の姿を思い出して涙腺が崩壊することがある。かわいい顔を見ながら頭を撫でたり、鼻の濡れ具合を確かめたり、ハグすることができなくなったことが、とてつもなく悲しい。そんなペットロス真っ只中で知ったのが、「クローンワンコ」だった。

救世主となり得るかも

「クローンワンコ」とは、本物そっくりに造られた犬の造形作品のことである。映画やコマーシャルなどの映像製作や特殊造形を手掛ける「株式会社ブラスト」(東京・千代田区)が、最新の技術を駆使して作り上げたそれは、動き出さないのが不思議なほどのリアリティーを持つ。誰でもクローン製作を依頼することが可能で、愛犬の情報を基に3ヵ月ほどで製作してくれる。世界でただひとつのこのクローンワンコは、ペットロスの救世主となり得るのでは、と思ったほどだ。

 映像制作が主体の同社が、なぜこのクローンワンコ事業を始めたのだろうか。そのきっかけや込められた思いなどを、同社代表取締役の岡部淳也氏と、同社の特殊造形部門ゼペットのチーフクリエイターである高橋勇也氏に聞いた。

 クローンワンコの誕生のきっかけは、9年ほど前に岡部氏が海外を訪れた際、ショーウインドウでおかしなポーズをとらされたシロクマの剥製を見たことだった。

「死んだ後にこんなことをやらされてはたまらないよな、と何とも言えない思いがこみ上げてきました。そこで、亡くなってしまった動物を使い、“鑑賞物”として剥製を作るのではなく、特殊造形技術を駆使したまるで生きている動物の造形物を作ればいいのではないかと思い立ったのです。帰国後、《アニマル アズ アート》というプロジェクトを立ち上げ、【眠る親子シロクマ】の構想案と事業計画書を書き上げました。まず、30年来の付き合いがある、日本最高峰のフィギュアメーカー「海洋堂」に所属する世界的な動物造形作家・松村しのぶに、ベースモデル製作を依頼。生物学と動物生態に準じたベースモデルを基に、自社内で実物サイズの『シロクマの親子』の造形作品を製作しました」

 細部にいたるまでリアルに再現したシロクマ親子のクオリティーはすぐに話題となり、テレビや新聞などマスコミでも多数取り上げられた。すると、テレビに映った本物そっくりのシロクマの姿を観た人たちから、立て続けに問い合わせの電話が入った。その問い合わせの半分は、「亡くなったうちの愛犬を作ってもらえませんか?」という、寂しそうな電話だった。

「ゼペットの動物造形技術がペットロスの穴を埋められるかもしれない。よし!本物そっくりの犬、クローンワンコを作ろう! と決心するまでに時間はかかりませんでした」

 と、岡部さんは言う。

 ちなみに、「クローン製作」を行うのは犬のみで、他のペットは手掛けていない。猫を作る話もあったが、短毛の猫は技術的に難しいことから、製作には至らなかったようだ。

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