東証「取引時間延長」で得をするのは誰? 一般的な投資家が受ける影響は

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 東京証券取引所が取引時間の延長を検討すると発表した。現在の取引は午前9時から午後3時まで、途中1時間の昼休みを挟むから実質5時間だ。これを延ばすかという議論の引き金は、昨年10月のあの事件だった。

「当時、大規模なシステム障害が生じ、取引が終日停止して世界的なニュースに。これを受けて4月以降、障害発生時は午後2時半までに注文受け付けが再開できれば、最低でも15分は売買が行えるようルールが変更。でも、それでは短すぎる、取引時間そのものを延長してはという話になった」(業界紙記者)

 ただし、同様の検討が行われるのは初めてではない。

「東京での取引は5時間ですが、ニューヨークは6時間半、シンガポールは7時間、ロンドンは8時間半です。投資家の利便性と国際競争力の強化を図るという理屈から、2000年、10年、14年と過去3度も延長が議論された。中でも14年は夕方や夜間取引も俎上にのり、ネット証券各社は賛成したものの、対面販売を主とする証券会社が人件費増を懸念して反対。実現にはいたりませんでした」(同)

 今回は「午後の立会終了時間の後ろ倒しについての検討」(東証広報)で、夜間の取引までは想定されない模様だが、時間延長は一般の投資家にとってメリットがあるのか。経済評論家・山崎元氏の見解はこうだ。

「ごく一般の投資家の堅実な資産形成を考えた場合、分散投資と長期保有が大原則ですから、1日における取引時間の拡大はさしてプラスにもならないでしょう。また一般投資家は取引開始の直後か、もしくは取引終了の直前に売買を集中的に行う傾向があり、その意味でも、全体の取引時間が延長されたところであまり関係がないと思います」

 でも、と続けるには、

「短期的な売り買いでの儲けを狙う人たちにとっては“もうワンプレイできる”時間が生じるわけで、利点があるとも言える。そこは人それぞれ自由ですので、個人的には時間延長に消極的賛成といった感じです」

 金融ジャーナリストの浪川攻氏が言うには、

「市場の活性化を目指すなら魅力ある銘柄を並べることが先決で、時間延長が即、効果を出すとは思えません。株式売買はデジタル化と相性がよく、どうせなら東証も“365日24時間取引を目指す”とでも言えばもっと目を引いたはず。株価に一喜一憂するデイトレーダーは寝る時間を失い、命を縮めるかもしれませんが」

週刊新潮 2021年6月3日号掲載