足かけ3年「28連敗」を記録したエースも…投手のドロ沼連敗記録、それぞれの事情

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「あの野郎」

 その後、オリックス時代の川越英隆も、02年5月12日から03年8月30日まで15連敗を喫し、あと1で前身球団の先輩の記録に並ぶところだった。

 プロ初登板からの連敗記録は、成田啓二(国鉄)と松崎伸吾(楽天)の「11」。どちらも球団創設間もない時期で、投手陣以外も含めて戦力不足だったという点で共通している。楽天のドラ1ルーキー・松崎は、制球力、球威ともにまだ1軍レベルではなかったのに、「ほかに投手がいない」(野村克也監督)というチーム事情から先発要員になった。

 1年目の06年は、登板10試合で0勝8敗。野村監督から「今のままじゃプロで通用しない。(出身大学の)東北福祉大に返せ」とこき下ろされた。翌07年も開幕から3連敗し、ついに成田のワースト記録に並んだ。

 だが、5月18日のロッテ戦、先発・岩隈久志が左脇腹肉離れを発症し、4回で降板すると、緊急リリーフの松崎は2回2/3を無失点に抑え、ようやくプロ初勝利を手にする。

 7回2死から安打、四球と突然乱れ、交代となったことから、「あの野郎、(白星が)頭にちらつきやがって」と怒った野村監督に降板後、ベンチで説教されたエピソードも知られている。

 最後に連敗、連勝の両方で記録をつくった投手を紹介する。大洋、日本ハム、ダイエーで通算21年間プレーした間柴茂有である。

 大洋時代の75年に開幕6連勝を記録したが、その後7連敗でシーズン終了。翌76年も0勝4敗に終わり、77年4月13日の阪神戦で通算13連敗となった。この間、本名の富裕は「勝負運に弱い」という占い師のアドバイスから、茂有に改名している。

 その甲斐あって、同年4月17日の中日戦で2年ぶりの勝利。「(13連敗は)プロ野球ワースト7位に入る成績だそうですね。今度は何でもいいから、ベスト7位に入れるような記録をつくりたい」と誓った間柴は、日本ハム時代の81年に開幕から15連勝(15勝0敗)し、2013年に田中将大(楽天)に抜かれるまでプロ野球トップの座を守りつづけた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年6月3日掲載

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