故障者続出でピンチの巨人、楽天、ソフトバンク戦はどうなる?【柴田勲のセブンアイズ】

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 2年ぶりのセ・パ交流戦が25日からスタートする。巨人は交流戦の成績(※)がいい方だが、直前にしてタイミングが悪い。ここに来て故障者ラッシュだ。

 すでにエース・菅野智之は「右ヒジの違和感」、主将・坂本勇人は「右手親指の骨折」で離脱中だ。この2人だけでも痛いのに、23日の中日戦(バンテリンドーム)では梶谷隆幸が3回の守備で負傷交代した。左太もも裏の違和感だという。梶谷は1番打者として5月、3割6分8厘と打撃好調で、ゼラス・ウィーラーとともに打線を引っ張っていた。

 好救援を続けていた野上亮磨は18日の広島戦(東京ドーム)で右肩に異常が発生、代走の切り札・増田大輝も右太もも裏痛で戦列を離れている。梶谷がもし長期で離れるようなら戦力ダウンのダメ押しになってしまう。

 でも、ケガだけは仕方ない。やろうと思ってやるわけではないからね。最近の今コラムで巨人は「我慢の時」を連発してきたが、ここはもう3度目の「我慢の時」だ。

 交流戦の日程は6連戦が3週連続で続く。25日からはパ2位の楽天(東京D)、2年連続日本シリーズで4連敗を喫している1位のソフトバンク(福岡PayPayドーム)である。これはきつい。3勝3敗なら御の字で2勝4敗、いや1勝5敗もあり得る。

 エース・菅野不在の中、先発陣が頼りない。5月の16試合で先発が投げた最長イニングは7回だ。それも4試合。5月に白星を手にした先発投手はエンジェル・サンチェスと戸郷翔征だけだ。こうなると救援陣の負担はどんどん重くなる。

 菅野は7日のヤクルト戦(東京D)で緊急降板した。8日に出場選手登録を抹消されたが巨人首脳陣は軽傷を強調、先発1回飛ばしをほのめかしていた。

 だが、21日の中日戦で先発マウンドに上がったのは畠世周だった。リハビリがままならず調整が思ったように進んでいないのだろう。菅野の交流戦成績は10勝9敗ながら防御率は2.58。交流戦を前に原辰徳監督も今後に向けて気がかりに違いない。

 だが、以前記したが、菅野が「もう大丈夫です。いけます」と言ってくるまで待つ以外ない。違和感は本人にしかわからないからで、周囲が決められることではない。

 菅野は今オフにもメジャー再挑戦すると言われているが、それはどうか。メジャーは肩やヒジを故障した投手に対しては非常にシビアだ。登板間隔は日本では中6日だけど、メジャーは中4日である。しかも前回の足の不安から2度目の抹消だ。2年前には腰痛から離脱と復帰を繰り返している。

 これは私の見立てだし、先のことはだれにもわからない。ただ菅野自身は早く戦力となって復帰したい、好成績を残したい、この一心だろう。

 それにしても巨人投手陣はコントロールが悪い。四球数は153個でリーグ5位だ。23日に先発した今村信貴だが、開幕当初とは別人だ。コントロールの悪さに加えて球に力がない。高橋優貴も最近は球に威力がなくなっている。サンチェスにしてもいい球と悪い球がハッキリしている。今村は2回途中降板で2軍落ちしたが先は長い。もう一度、自分の球を磨いてもらいたい。

 22日の中日戦、8回に2番手・左腕戸根千明がマウンドに上がった。左の大島洋平、京田陽太を打ち取ったものの、右の福田永将には四球、しかもストレートだった。で、続くダヤン・ビシエドに適時二塁打を浴びた。ここで降板したが四球がきっかけだった。中日に追い上げられる結果となった。

 何度でも言うが、とにかくストライクを先行させることだ。抑えた、打たれたは結果論だ。怖がってはダメだ。攻めの姿勢でいくことだと思う。

 振り返ってみるとやはり、坂本の抜けた穴は大きい。代理を務める選手はいない。坂本、丸佳浩、そして岡本和真の3人がそろって得点力はアップする。下位打線で挙げた得点は儲けものだ。

 岡本和は本塁打リーグ2位、打点は1位だが、打率が上がってこない。(.260)岡本和が打たないと打線はつながらない。

 坂本不在のいま、やはり打線は「丸待ち」になると思う。甘い球をファウルにして難しい球に手を出しては凡退している。調子が悪いのだろう。本格的な復調に期待である。

 巨人は故障者ラッシュだが、他チームも苦しいはずだ。巨人の場合は大きく報道されるので目立つけど、どこも故障者を抱えてやっている。

 今季は何度も「我慢の時」の言葉を使うが逆に言えば、若手や控えには「チャンスの時」だ。27日の楽天戦にはプロ3年目の左腕、横川凱が先発する可能性があるという。原監督もこの事態を「ワンチーム」で乗り切ると選手たちの活躍を期待している。交流戦は何が起こるかわからない。首位・阪神とのゲーム差は4.5。これ以上離されないためにも、なんとしてでも交流戦をうまく乗り切ってほしい。光は必ず見えてくる。

 ※交流戦は過去15年の通算成績ではパの1098勝に対してセは966勝。巨人は354試合で181勝164敗引き分け9で勝率.525。セではトップ、全体では4位。過去2度優勝。2019年は3位だった。圧倒的な強さを誇るのはソフトバンクで優勝8度、勝率は.629。

※記録は24日現在

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年5月25日掲載

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